[ワシントン 20日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は9月19─20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%で据え置いた。ただタカ派的なスタンスを強め、年内の追加利上げを想定。金融政策は2024年を通して従来の予想より大幅に引き締まった水準にとどまるとの見方を示した。
FRBは金利・経済予測で24年の政策金利中央値を5.1%と予想。6月時点は4.6%だった。23年末の政策金利の予想中央値は6月時と同じく5.50─5.75%となった。現行水準よりも0.25%ポイント上回る水準となる。
その先の予想については、6月公表の前回の金利・経済予測で24年末までに1%ポイントの金利低下が予想されていたのに対し、今回の予測では低下幅は0.50%ポイントとなった。
パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「われわれは入手されるデータのほか、進展する見通しとリスクを見極めながら、慎重に政策を進める立場にある」とし、FRBの選択肢はオープンとの姿勢を表明。同時に「適切なら一段の利上げを実施する用意がある。インフレ率が目標に向かって持続的に低下していると確信できるまで、政策金利を制約的な水準に維持する」とも述べた。
<金利・経済見通し>
政策金利は24年末までに5.1%、25年末までに3.9%に低下するとの予想が示されたほか、FRBが主要なインフレ指標として注目する個人消費支出(PCE)価格指数は23年末までに3.3%、24年に2.5%、25年末までに2.2%に低下するとの予測が示された。
FRBが目標とする2%まで低下するのは26年になると予想。これは一部の当局者が可能と考えていた時期よりも遅い。
同時に、経済成長率見通しは大幅に上方修正。これまでの予測では23年の成長率は最低0.4%程度と見込まれていたが、今回の予測では2.1%とした。失業率については、23年は3.8%前後で安定的に推移し、年末には4.1%に上昇するとの見通しが示された。
FRBは声明で「インフレ率は高止まりしている」と指摘。同時に「最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している」とし、「雇用の伸びはここ数カ月間鈍化したが依然として力強く、失業率は低いままだ」とした。
今回の予測は、FRBが景気悪化を引き起こすことなくインフレとの戦いに勝利できると自信を強めていると示しているとも受け止められている。
パウエル総裁は記者会見で「ソフトランディング(経済の軟着陸)は常にもっともらしい見通しだと考えてきた」とし、これは現在でもあてはまると指摘。ただ同時に、FRBの予測は公式見解ではなく、予測は的中しないこともあると述べ、慎重な姿勢も示した。
<ソフトランディング実現に自信>
市場関係者も、FRBは経済の軟着陸シナリオに自信を深めているとの見方を示している。
フィッチ・レーティングスの米地域経済責任者、オル・ソノラ氏は「成長率の上方修正と24年の失業率の下方修正に込められたメッセージは、長期金利の上昇にもかかわらず、FRBがソフトランディングへの予想を上方修正したことを明確に示している」と述べた。
インフレーション・インサイトのプレジデント、オメール・シャリフ氏は、FRBが示した見通しについて「労働市場に関しては奇妙なほど楽観的で、今年のコア・インフレ率については奇妙なほど悲観的だった」としながらも、FRBの見通を踏まえると、金融政策の見通しがタカ派方向にシフトするのは驚くべきことではないとの見方を示した。