Lucia Mutikani

米GDP、第3四半期は4.9%増 1年9カ月ぶりの高い伸び

[ワシントン 26日 ロイター] – 米商務省が26日発表した2023年第3・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比4.9%増と、21年第4・四半期以来約2年ぶりの高い伸びとなった。景気後退懸念にもかかわらず、底堅い労働市場を背景に堅調な個人消費が主導し、市場予想の4.3%増も上回った。

9四半期連続で減少していた住宅投資の回復も成長率押し上げに寄与したほか、企業も在庫を積み増した。一方、企業の設備投資は減少した。

フィッチ・レーティングスの米経済部門責任者オル・ソノラ氏は「米連邦準備理事会(FRB)の積極的な引き締めサイクルや金融情勢の逼迫を寄せ付けず、経済成長は回復から再加速に移行した」と述べた。

ボストンカレッジのブライアン・ベスーン教授(経済学)は「米経済に驚くほどのレジリエンス(強靭さ)がある。23年は2四半期連続で生産性主導の成長が見られた」と指摘した。

米経済活動の3分の2超を占める個人消費は4.0%増と、前四半期の0.8%増から大きく加速。モノとサービス双方への支出が見られた。

しかし、消費支出を圧迫するリスクは増大しているようにみえる。10月に再開された学生ローン返済は、エコノミストの試算によると、約700億ドルで、個人の可処分所得の約0.3%に相当する。

金利上昇に伴い、クレジットカードの滞納も増加している。また、税金が世帯の可処分所得への重しとなる中、貯金を切り崩す動きも出ているもようで、第3・四半期の貯蓄率は3.8%と、5.2%から低下した。

税引き後の家計の可処分所得は1.0%減

FRBが物価の目安として注目する食料とエネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)指数は2.4%上昇と、前四半期の3.7%から鈍化し、20年第4・四半期以来の低い伸びとなった。

在庫は806億ドル増加。GDP伸び率を1.32%ポイント押し上げた。

第2・四半期のGDPは2.1%増だった。FRB当局者がインフレを伴わない成長率とみなす1.8%前後を上回るペースで拡大している。

第3・四半期の大きな成長ペースが続く可能性は低いものの、FRBの積極的な利上げにもかかわらず経済が底堅いことを裏付けた。第4・四半期は、全米自動車労働組合(UAW)のストライキ学生ローン返済の再開による影響で成長が鈍化する可能性がある。

大部分のエコノミストは従来の予想を修正し、今ではFRBが経済の「ソフトランディング」(軟着陸)を実現できると考えている。第2・四半期に労働生産性が堅調に推移し、単位労働コストの伸びが緩やかになった傾向が第3・四半期も続くと見込んでいるためだ。

ただ、米国債利回りの上昇と株価下落によって金融情勢が逼迫する中、GDPによる金融政策決定への影響は限定的なもよう。ウィリアム・ブレア(ロンドン)のマクロ・アナリスト、リチャード・デ・チャザル氏は「FRBが利下げに着手する必要を示唆するものはなかった。同時に、再利上げの差し迫った必要性を示唆するものもなかった」と述べた。

GDP発表後、米金利先物市場ではFRBが年内は金利を据え置き、来年半ばに利下げを開始するという観測が強まった。 もっと見る

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