米大統領選挙まで残り1年を切った。現時点では民主党がバイデン大統領、共和党がトランプ前大統領の候補者指名が有力だ。どっちが勝ってもこのままいけば前代未聞の高齢者対決となる。ウクライナ戦争に加えてイスラエル・ハマス戦争が勃発。世界を覆ってきたインフレは相次ぐ政策金利の引き上げでどうやら収束の気配がみえてきた。世界中が期待するソフトダンディングが実現するかどうか、依然としてはっきりしない。景気後退の懸念だって払拭できたわけではない。この先何が起こるかわからない。大統領候補が無事決まったとしても民主、共和両党が団結できるかどうさえ不透明。民主党ではイスラエル寄りのバイデン大統領に対して左派が批判を強めている。一方の共和党。先の下院議長選挙をみるまでもなく、党内右派と穏健派の対立は抜き差しならない状況になっている。これに輪をかけて民主党と共和党の溝は開く一方だ。高齢大統領で果たして大丈夫なのか、他国のことながら気になる。

きのう時事Web版に掲載されていた記事が面白かった。タイトルは「トランプ氏、なぜ強い? 多数派失う白人の『怒り』力に―保守派論客アビク・ロイ氏」。保守系シンクタンク「機会均等研究財団」のアビク・ロイ会長のインタビュー記事だ。保守系のシンクタンク。トランプ氏寄りのコメントになっているのは致し方ない。「トランプ氏は共和党内でなぜ強いのか」との質問に対する答えは次通りだ。「米国の生活水準は世界的に見て高いが、国民は『不幸だ』と感じている。住宅価格や教育・子育てのコストが上昇し、中低所得層を圧迫。地域のつながりが弱まって人々は孤立し、薬物やアルコールによる死が増えた。さらに人口統計上、白人が多数派から少数派に転じる過渡期にあり、その不安と緊張が政治に反映されている。1980~90年代の共和党は世界中の人々を歓迎した。だが今、『非欧州移民が米国文化を弱体化させた』と感じ、受け入れを制限しようとする新たな国家主義的な運動が起きている」。

「ブルーカラーの有権者がトランプ氏に引き寄せられたのは、社会の特定のグループに不快感を与えないよう配慮する『(既存政治の)ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)』への不満だ。『エリートが私たちの発言や振る舞いを指図している』と感じ、これに敵意を示すトランプ氏を歓迎した」。要するに戦争でも経済でもインフレでもない。メキシコの壁なのだ。移民の急増に不安を抱く有権者に「壁をつくる」と約束して実行した。壁は時代の転換期を先取りしていたのだ。こいう時代には若い人材が登場するはずだが、どういうわけか米国の大統領選挙は高齢者対決に向かおうとしている。これも変だ。なんとなく奇異な印象を受ける。どうして若い世代が出てこないのか?ここにロシアや中国の長期独裁政権に通じるような国家としてというか、政治システムとしての“老い”を感じる。ひょっとすると世界中で政治が衰退しているのかもしれない。

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