「金利のある経済」に向け官民は準備進める必要=サントリーHD社長<ロイター日本語版>2023年11月9日午後 9:29 GMT+9

杉山健太郎梶本哲史

「金利のある経済」に向け官民は準備進める必要=サントリーHD社長

[東京 9日 ロイター] – サントリーホールディングス(SUNTH.UL)の新浪剛史社長は9日、ロイターとのインタビューで、日銀が10月の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の運用を再柔軟化したことを巡り、「YCCそのものをやめていくということのメッセージだと捉えた方がいい」と指摘。「金利のある経済」に向けて官民が準備を進めていく必要があると述べた。

日銀のYCC運用柔軟化について、やや分かりづらい点もあるが、流れているメッセージは「クリアだ」と語った。金利がプラスになっていくことを前提に準備しておくようにという日銀の意思表示でもあるとの認識を示した。

新浪氏は政府の経済財政諮問会議の民間議員を務めている。現在は人手不足が日本企業の新陳代謝のてことなっているが、「金利のある経済」に転換すれば一段と新陳代謝が起こってくると指摘。日銀は金融政策の正常化に「動くべきだ」と語った。

経営力がない企業は退出するしかないが、社員が救われる仕組みを国も作っていかなければならないと述べた。失業しても次に職を得られるよう訓練するなど体制整備を急ぐよう強調した。

日銀が正常化の方向に動くには「正直1年くらいかかるだろうなと思う。1年で済めばいいが、それはまさにその準備がどれだけ進むかだ」と述べた。

<賃上げの「のろし上げる」>

同社は2023年の春闘で組合からの基本給一律1万円のベースアップ(ベア)の要求に満額回答。定期昇給(定昇)と合わせて平均約7%の賃上げを実施した。24年も同レベルとなる7%程度の賃上げを目指すことをすでに表明している。

新浪氏は狙いについて、持続的に賃上げしていく会社だということを示し、いい人材が集まるようにするには最適な方法だと説明。教育などの人材投資も含め、全体的に人件費が上がっていくことは経営にとってプレッシャーとなるが、それをマネージしていくことが経営者のこれからの要諦になると述べた。

消費者向けのビジネスを展開している以上、価値の高いものを、価値の通り買ってもらえる社会を実現しなければならないとも指摘。「食品業界最大企業としてのろしを上げることによって、そういう社会を作っていきたい」と語った。