注目のアルゼンチン大統領選挙。19日に実施された決選投票の結果、野党で右派のハビエル・ミレイ下院議員が対抗馬の与党連合中道左派セルヒオ・マサ経済相を破って勝利した。ロイターによると投票率はミレイ氏が56%近く、マサ経済相は約44%だった。アルゼンチンは150%を超えるハイパーインフレや貧困層の増加に直面、政治的混乱が続いている。ロイターによるとミレイ氏は国内経済が停滞する中、中央銀行と通貨ペソの廃止、歳出削減など痛みを伴う改革を訴えた。アルゼンチンのトランプと称されるミレイ氏の主張は、トランプ氏の掲げるMAGAに似ている。違うのはAMERICAがARZENTINEに変わっているだけだ。一向に改善しない生活状況に苛立つ有権者の多くが、その主張に賛同して投票したといわれる。その中心となったのが若者。経済学者でもあるミレイ氏に、既成政党による「安定」よりも「変革」を求めたのだろう。

時を同じくして中国では米国の左派が主導するMMT(Modern Monetary Theory)への関心が高まっているという。ブルームバーグ(BB)によると中国人民大学教授の賈元良氏は、新著「Modern Monetary Theory in China(仮題:中国における現代貨幣理論)」を共同で執筆。中国ではここ数年、当局が景気減速への対応策として財政刺激策やインフラ投資への依存を強めており、MMTへの注目度も高まっている。習近平国家主席を悩ませているのは巨額の不良債権を抱える住宅関連業界の不振と、高い若年層の失業率。あの手この手の対策で状況の改善に努めているが、地方政府が抱える膨大な負債を前に、財政出動もインフラへの投資も中途半端。リーマン・ショックの後に巨額の財政出動に踏み切り、世界経済をリードした当時のパワーは見る影もない。中途半端な刺激策は不況を長引かせるだけ。そこでMMTに期待が集まるというわけだ。

BBによると「中国は先月、景気浮揚を狙った異例の年度途中の予算修正で財政赤字の対GDP比率上限を従来の3%から3.8%に引き上げた」。が、いまのところ目に見えた効果は上がっていない。これに対して賈氏は「中国は今後10年間、対国内総生産(GDP)比で平均5%を超える財政赤字を容認すべきだ」と主張している。アルゼンチンのミレイ氏も中国の賈氏も既存の伝統的政策からの脱却を目指しているようにみえる。それが成功するか失敗するかわからない。先行者ともいうべきトランプ大統領は民主党ならびに左派系指導者との間に、抜き差しならない溝をつくっている。岸田首相に対する“増税メガネ”との揶揄は、既成勢力が狙う増税路線を見抜いているのだろう。世界中で既成勢力とそれを打ち破ろうとする勢力のせめぎ合いが始まっている。どちらに分があるのか、とりあえずはアルゼンチンの新政権に注目。

エンタープライズプランの詳細はこちら