ロシアのプーチン大統領が8日、来年3月の大統領選に通算5選を目指し出馬すると宣言した。2020年の憲法改正で多選制限が空文化し、立候補は既定路線。「いつ、どのように」表明するかが焦点だったが、機会として選んだのはウクライナ侵攻に参加する軍人らへの勲章授与式で、戦時色の濃いものとなった。
「(ウクライナの占領地の)住民を代表し、立候補をお願いしたい」。式典後、親ロシア派幹部らがプーチン氏を囲んで口々に要請。プーチン氏はこれを受ける形で出馬を表明した。
ペスコフ大統領報道官は「シナリオ」があったことを否定するが、プーチン氏としては「独裁」の長期化ではなく「民意」に基づく続投だとアピールしたい。現在4期目の任期中も、出馬の意向を問われるたび「国民次第」とはぐらかしており、有権者の要請を受諾する形になるとの見方が強かった。
6年前の4選出馬表明は、中部ニジニーノブゴロドの自動車工場を視察時に行い、経済重視の姿勢を示した。今回は勲章授与式で、立候補を求めたのは軍人ら。公約して取り組む最優先課題が、ウクライナ侵攻の「勝利」だと明示した格好となった。
「その時々で、さまざまな思いを抱いていた」。プーチン氏はこう繰り返し、出馬に迷いがあったと主張。20年の改憲の際、4期目満了後の「院政」か「再出馬」かを巡って議論があったことを想起させた。その一方で、この発言には「続投ありき」ではなく、戦勝のためにやむを得ない決断だったと演出する狙いも垣間見える。
プーチン氏は1、2期目を終えた08年、憲法が「連続2期を超えてはならない」と規定していることから首相に転身。「一回休み」を経て、12年から大統領として3、4期目を務めた。改憲で過去の任期がリセットされると見なされ、5選出馬に道が開かれた。