▽焦点:共和党指名争いでヘイリー氏人気上昇、トランプ氏打倒には支持層拡大が急務<ロイター日本語版>2023年12月28日午前 7:12 GMT+9
[クリアレーク(米アイオワ州) 23日 ロイター] – 2024年米大統領選で共和党の指名を争う候補の中で、ここ数カ月の世論調査ではニッキー・ヘイリー元国連大使の人気が上昇している。大学を卒業してかなりの資産を持ち、郊外に住む専門職従事者が主な支持者だ。これらの人々の多くは、現在指名獲得レースで圧倒的優位に立つトランプ前大統領のとげのある物言いや訴訟問題にうんざりしている。
ただヘイリー氏がさらに勢いを強め、トランプ氏打倒と共和党指名獲得に現実味を持たせないならば、支持層を迅速に広げなければならない、というのが同氏の敵味方共通の認識だ。
ロイターが取材した8人の世論調査担当者やストラテジストの話では、つまりヘイリー氏は農村地域の有権者や中間層、労働者、非大卒者を取り込む必要がある。8人のうち一部はヘイリー氏陣営の関係者が含まれている。
共和党指名獲得レースの初戦は来年1月15日にアイオワ州で開催される党員集会。ヘイリー氏はこれに先立ち、トランプ氏支持が強い地域で遊説を続けている。
ヘイリー氏は11月には農家がメンバーとなる支持団体を立ち上げ、陣営は農村部での知名度向上や同氏の魅力を広める目的でメディア広告も展開した。
今月のアイオワ州における集会でヘイリー氏が言及したのは、自身が育ったサウスカロライナ州の信号が二つしかなかった小さい町の話。聴衆に対して「私はアイオワによく似た場所で成長した。綿花畑と酪農場で遊んでいた」と親しみを込めて語りかけた。
また農村部への配慮が不当なほどに少ない退役軍人向けの公的医療制度の欠陥を長々と指摘。一方で最近強めていたトランプ氏批判は、この場ではほとんど触れなかった。
世論調査によると、アイオワ州ではトランプ氏の支持率が約50%で、他の共和党候補をリード。ヘイリー氏は、2位のデサンティス・フロリダ州知事と僅差の3位に付けている。最近数週間で見ると、かつてトランプ氏を本格的に脅かすとみなされたデサンティス氏の支持が低迷し、ヘイリー氏の支持は伸びた。
ヘイリー氏の集会の一つに参加したトラック運転手のレス・ハーディーさんに、会場に着いた時点で聞いたところでは、党員集会で誰に投票するか決めていないがトランプ氏を考えていると答えてくれた。
ところが集会が終わった後にまた取材すると、ヘイリー氏に気持ちが傾いていると明かした。さまざまな質問に正面から応じる姿や、飾り気のない素朴な態度を評価したためだ。
もっともハーディーさんの同僚の大半はトランプ氏を支持している。「彼らの多数の目にはトランプ氏がナンバーワンとして映っているのは間違いない」という。
<陣営に自信>
今月公表のロイター/イプソス調査によると、共和党指名獲得レースに関する全米レベルの支持率はトランプ氏が61%、ヘイリー氏とデサンティス氏がともに11%だった。
ヘイリー氏は、大卒の共和党支持者の約2割を取り込み、郊外在住者の支持率でも健闘している半面、非大卒者の7割はトランプ氏を支持した。
政治活動委員会(PAC)枠外団体としてヘイリー氏を応援している組織SFAの内部調査でも、同氏は高所得層や大卒者、郊外在住者の間では優勢だ。
この調査の担当者は、ヘイリー氏の注目度が高まり始めて有権者にとってよりなじみのある候補になるとともに、農村部や非大卒者の支持を拡大できる余地があると自信を示した。
SFAは9月下旬以降、ヘイリー氏支持の広告や手紙送付などに2500万ドル余りを費やしており、この頃から幾つかの大口献金者の間で本格的な応援の動きが出てきた。
最近になってSFAが力を入れているのは、格差拡大を嘆く中間層の問題への取り組み。陣営の広報担当者は「ヘイリー氏はどんな有権者も軽んじていない。彼女はアイオワ州全域を回って集会を開き、全ての質問に答えて誰とでも握手を交わしている」と強調した。
アイオワ州の党員集会の1週間後にはニューハンプシャー州で予備選挙が実施される。アイオワよりもずっと裕福なニューハンプシャーでは、ヘイリー氏の支持率はトランプ氏に次ぐ2位。ヘイリー氏の支持団体の一つが今月半ばに行った内部調査の結果をロイターが確認したところでは、ニューハンプシャーでヘイリー氏とトランプ氏の一騎打ちを仮定した場合は、互角の勝負を演じられるという。
ロイターはアイオワ州でのヘイリー氏の集会に参加した20人に取材し、今回はトランプ氏に票を入れないと考えている人や、なおトランプ氏への投票を検討中という人たちの一部をヘイリー氏が引きはがしつつあることが分かった。
看護師のトニ・フェザーストンさん(64)は、ヘイリー氏から強い印象を受けたと話す。
フェザーストンさんは今でもトランプ氏に愛着はあるが、訴訟問題や政策から関心をそらすような物議を醸す言動する性癖がある以上、2期目の大統領になっても打ち出した公約を全て達成できないだろうと予想。「ヘイリー氏は地に足が着いているようだ。トランプ氏は好きだが、ヘイリー氏(の意見に)同意する」と複雑な心境を明かした。
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