パーティー券疑惑に揺れる自民党だが、1月25日に開かれた政務調査会で「DAOルールメイクに関する提言」が承認された。サブタイトルは「我が国における新しい組織のあり方について」となっている。ブロックチェーンとかweb3といった最先端の科学技術に興味のない方には、いきなりDAOといわれても、何のことかわからないだろう。DAOとはDecentralized Autonomous Organizationの略で、日本語では通常の分散型自律組織と訳されている。個人的には非中央集権型自律組織といった方がわかりやすいと思うが、要は組織を実質的に支配するトップがいない組織のことを指す。いまのところほとんどの組織には、そこに君臨する人がいる。民間企業で言えば社長や会長であり、政党で言えば総裁とか代表といった人たちを指す。その人たちが権力を握って上意下達、独裁者的に振る舞う。これが諸悪の根源になるケースが多い。
DAOはブロックチェーンという技術を使って組織を運営する仕組み。この技術はすでに暗号資産やNFTといった資産の売買に利用されている。これを組織に活用したものがDAOだ。民間ではすでにDAO型の組織がいくつも登場している。いずれも自然発生的に誕生したもので、DAOに関する法律や税制、課税上の問題など環境整備はほとんど進んでいない。こうした問題を解決しようというのが自民党のデジタル社会推進本部のもとに設置されている特別委員会の「web3PT」であり、そこで論点整理が行われ報告書にまとめられたのが冒頭に掲げた提言である。DAOは組織を実効支配する代表者がいなくても、組織の運営に支障をきたさない仕組みになっている。既存の組織、例えばいま問題となっている派閥。派閥の解消を拒否している麻生派では、代表を務める麻生太郎氏が最近、上川陽子外務大臣を評して「オバサン」「美人とは言わない」などの問題発言を連発した。
麻生氏は派閥としては解散しないが、政策集団に移行していくと主張している。政策集団に移行しても会長は麻生氏だ。主要メディアはこの人の発言を、女性差別との関連で取り上げている。それもあるが、発言の本質は岸田総理の後継候補には「カミムラがいる」と宣言したことにある。政局をリードしたいとの思惑が見え隠れしている。自民党が総スカンを喰らっている最中に、反省もなく次期総裁選を意識しているところに、麻生氏のとんでもない時代錯誤と疑惑錯誤がある。この人がトップにいる限り、麻生派は麻生氏の“思惑”を忖度しなければならなくなる。これが派閥や自民党という組織がはまり込んだ泥沼なのだ。麻生氏がいなくなっても現状のままだと麻生派には第2、第3の麻生氏が誕生する。麻生派をDAOにすれば麻生氏的なトップは不要になる。そうすれば自由に政策研究や政局がらみの発言ができるようになるだろう。個々でみると政治家には優秀な人材が多い。ダメなのはトップだ。DAOはダメなトップを排除し、優秀な人材を後押しする。早急に環境整備すべきだ。
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