1月の米消費者物価は前年同月比で3.1%上昇、予想の2.9%を上回った。予想をわずか0.2%上回っただけだが、世界中のマーケットは大混乱。NYダウは前日比で524ドル安、日経平均先物は夜間取引で同460円安。円は対ドルで150円台に急落した。日米だけではない。アジアも欧州も似たり寄ったり。世界中がインフレ再加速ショックの様相だ。先行きどうなるか、誰にも確たることはわからない。市場関係者が、確信をもって予想していたFRBの利下げ期待がこれで一気に萎んだ。利下げどころか、利上げの可能性すら指摘され始めている。いずれにしてももう少し様子をみないと確たることはわからない。鈴木財務大臣は「為替、なお一層の緊張感を持ってみている」といつものコメント。財務省の神田財務官は「年初来円安は急速、必要あれば適切に対応」と介入を匂わせる。
大臣も財務官も「だからどうなの」と言いたくなるような、判で押したようなワンパターン。植田日銀総裁のコメントは見当たらないが、円安の進行に頭を痛めていることだろう。円安を止める手っ取り早い手段は政策金利の引き上げ。介入はスポット的対応策に過ぎないが、政策金利の引き上げは長期的に効果を発揮する。政府・日銀はそんなことは百も承知だろう。デフレ再燃を懸念する政府、異次元緩和にがんじがらめに縛られている日銀、どちらも動くに動けない。頼みの綱は春闘。インフレを上回る賃上げ。財界も連合もこの点で気脈を通じている。だが、円安進行でインフレ再加速となれば経営者も大幅賃上げに躊躇する。物価が上がれば消費は落ちる。消費が低迷すれば景気も足踏みを余儀なくされる。ことによるとデフレ再燃か。そんな中で経営者は物価を上回る賃上げに踏み切れるのか。
疑念が疑念を呼んで再び悪循環突入の悪い予感も。ブルームバーグが昨日配信した記事によると、「日本のGDP、世界4位転落が確実な情勢」だという。GDPの国際比較はドルベース。円安が加速している日本は2023年にドイツに抜かれ、世界第4位に転落するそうだ。米国の物価がちょっと上がっただけで対ドル相場が150円台に急落するいまの状況を見ていれば、「むべなるかな」といったところだ。GDP経済史観からの脱却をというひともいる。それもわかるが、GDPの4位転落も円安も「国力衰退」の象徴である。財務省は「財政赤字は孫子にツケを残す」と声高に叫ぶ。本当にそうなのか。円安で国力が衰退した将来の日本で、我々の子孫は本当に幸せになれるのだろうか。円安で喜ぶのは政府・官僚・一部の輸出中心の大企業。円安にともなうインフレで一般庶民の生活苦は限りなく続く。日本経済は一見好循環にみえる根源的な悪循環に陥っているのでは・・・
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