日本では目にする機会が減っていますが、「まるでアート!」「ブラジルで買えるの?」「とってもシンプルでクール」と話題を集めている、日本の伝統品…。
アメリカの新聞社「The New York Times(以下NYタイムズ)」が紹介したところ、注文が前月の5倍超になったのというのは、京都の風呂敷専門店「むす美」の“風呂敷”です。
同店を手掛ける山田繊維株式会社(本社:京都市中京区)の広報・山田悦子さんに取材しました。
さすがNYタイムズ、全米から注文殺到
風呂敷が紹介されたのは、NYタイムズの記者からの「ラグジュアリーギフトのコーナーで、ホリデーシーズンのラッピングと風呂敷についてインタビューしたい」という問い合わせメールがきっかけ。
WEBで『無駄を出さないギフトラッピング』と題された記事が配信されると、オンラインショップの注文がひっきりなしに。「約2週間続いて、驚きました。オーダーは500件以上、お問い合わせも100件以上。NYタイムズの信頼性は大きいのだなと実感しました」と山田さん。
記事では、風呂敷の歴史や贈り物を包む日本の習慣、風呂敷の模様や包み方が紹介されましたが、「ちょっとした包み方でも感動してもらえるようでした。特に招き猫やおかめひょっとこなどを描いたコチャエシリーズは面白いようです」。
風呂敷の文化や使い方を知りたいという声もあり、「例えばワインを包む際に風呂敷を遣う、贈る相手や季節に応じて風呂敷の柄を選ぶなど日本人には比較的なじみがある使い方も、アメリカの方からは新しい発見のように感じられるのだなと思いました」と話します。
海外観光客「日本に来たら、立ち寄りたかった」
2020年のレジ袋の有料化を機に、国内でも注目を集める機会が増えていますが、山田さんによると、同店のインスタフォロワーの7割は海外在住者。世界各地には現地の風土や文化に根付いたスカーフや布がありますが、「風呂敷の暮らしの中から生まれてきた知恵のある使い方や日本で職人さんが作っていること、歴史的な背景があり独自の文化として守られながらエコの観点から使えるという面に興味を持つ方が多い気がします」。
もともと、扱いやすい・壊れない・わかりやすいの3つを備えたお土産として求められていましたが、最近はSDGsと結びつき、人気が追い風に。
デザインの美しさ、1枚の布が自由自在に多用に活用できる点、日本らしさ(四季や趣き)を感じるお土産として手軽に持ち帰ることができる点、そのままファッションやインテリアクロスとして活用できる点が評価につながっており、エコロジーの意識が高い人たちも注目しており、海外では「Furoshiki」として認知されつつあります。
京都・東京の店舗には、「日本に来たら、立ち寄りたかった」と話す海外旅行客も多く、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、中国、韓国、台湾、シンガポール、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど国もさまざま。
日本人は機能性・実用性を重視して、洗えるものやコンパクトになるもの、またシワになりにくい素材や撥水加工のポリエステルを選びますが、ヨーロッパからの旅行客はリネン、オーガニックコットン、正絹などの素材を選ぶ傾向です。
「海外からのお客様はハッキリした色の風呂敷を好みますが、特にインドネシア・インド・中国系の方は赤がお好きな方が多いですね。お土産には浮世絵などわかりやすく日本らしいもの、自分用にはお好みのモダンなものを選ぶように思います」。
山田さんは「ものを風呂敷で包む、そこには相手を大切に思う気持ちやものを大切に扱う気持ちが込められています。時代は変わって、風呂敷の素材や模様もさまざまに変化していますが、私たち日本人の意識の中にはるか昔から刻み込まれてきた“包む”ことへの思いは変わらないもの。そこが海外の方に受け入れられていることをうれしく思っています」。
【風呂敷むす美 関連情報】
1937年に創業した山田繊維株式会社が、2005年に「むす美」の東京店をオープン。伝統的な風呂敷のほか、デザイン・ユニットCOCHAE(コチャエ)の縁起柄シリーズをはじめ、美術家 野老朝雄氏、皆川明氏による「ミナ ペルホネン」、テキスタイルデザイナーである鈴木マサル氏、フランス人デザイナー アデリーヌ・クラムと、型染アーティストkata kataとコラボレーションしたデザインも。機能を追求した、雨よけカバー、レジャーシートとしても使える撥水加工の「アクアドロップ」シリーズも人気。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・宮前 晶子)