▽イスラエル、イランとの対立で新局面-代理勢力だけでなく直接対峙も<bloomberg日本語版>2024年4月15日 1:17 JST
Ethan Bronner
- イランは攻撃成功と宣言、イスラエルも迎撃成功と強調
- イスラエル国内では今後の進め方に関する意見に相違も
イランのミサイルと無人機によるイスラエルへの攻撃は、不安定な中東地域にとって危険な転機となった。イラン国内からの直接攻撃は前例のない行動であり、イランは大成功を収めたと宣言した。
しかし、米英などの同盟国からの支援により、イスラエルはミサイルや無人機の大半を迎撃した。死者は出ず、被害も軽微だった。イスラエル側も大成功を収めたと宣言している。
【イスラエル】イラン報復攻撃、大半を迎撃-ハマスは戦闘休止拒否か
両国とも対立関係が変化したとみている。イランは、イスラエルが再び攻撃される可能性があることを認識しなければならない「新しい方程式」と表現。イスラエルは、自国を攻撃してくるいかなる国も攻撃すると表明した。
14日には、安全保障を巡るイスラエルの閣議とともに、主要7カ国(G7)が首脳会議を実施。米国を含む同盟国は、イスラエルが自制し、事態をさらにエスカレートさせないことを望んでいる。
イスラエル国民の多くがこのアプローチに前向きな一因は、イランの攻撃が失敗に終わり、武力による迅速な示威の必要性が低下したと受け止められていることにある。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに対する戦争遂行を巡り、米政府から数週間にわたって批判されていたが、イスラエル国民は再び一体感を感じ、それに満足していることも影響している。
イスラエル参謀本部諜報(ちょうほう)局トップを務めていたタミア・ヘイマン氏は「イスラエルは今夜、初めて同盟国の一員として行動した。その同盟こそ、ガザ戦争の次の答えだ」と述べた。
しかし、ネタニヤフ首相擁立を続ける右派勢力は違う考えだ。イスラエルが早急に手痛い反撃を実行しない限り、イランとその代理勢力からは弱腰と判断される可能性が高いと指摘する。
ベングビール国家治安相は「いま必要なのは、徹底的な攻撃だ」と主張した。
イランは1日にシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館をイスラエルが攻撃し、イラン軍将校が死亡した事件への報復としてミサイルを発射した。イランが攻撃を早くから表明していたのは、戦争を始めるというよりも、むしろ主張を通したい証しだとの声が多かった。攻撃を開始してからほどなく、イランの国連代表部は「この問題は終結したとみなすことができる」と表明した。
今後の進め方に関する意見の相違の一端は、13日夜の攻撃をイラン大使館攻撃への報復と見るか、イランの対イスラエル政策の一環と見るかによって違いが生じている。
多くのイスラエル国民にとって、イランは地域の敵対勢力を操る人形使いであり、その最たる操り人形が、昨年10月にイスラエルを奇襲攻撃したハマスだ。
100人以上の人質がいまだに解放されておらず、数千人のハマス戦闘員がガザ南部の都市ラファに集結している。
イスラエルの元情報将校で、イランについて多くの著作があるアビ・メラメド氏は、イランの攻撃後、ラファ攻撃とハマス解体を主張するイスラエルに米国が同調することを期待しているという。
スモトリッチ財務相もX(旧ツイッター)への投稿で「教訓を学び、方向転換し、今すぐラファに進み、ガザ全域でイスラエルの完全な支配を回復する時だ」と述べ、同様の見解を示している。
米国は、ラファに避難している多くの市民とガザの人道危機拡大を理由に、このような作戦には警告を発してきた。
ハマスがイスラエルからの停戦と人質交換の申し出を拒否したのは、親イラン勢力がおびえるよりもむしろ結束していることを示す証左との見方もある。
しかし、イスラエル軍情報部門のディレクターを務めた経歴があり、イスラエル戦時内閣メンバーのガンツ前国防相に助言するアモス・ヤドリン氏の見方は違う。
「昨夜の攻撃は、戦争の戦略的変化、さらには終結につながる可能性がある」と指摘。「ハマスが十分に打ちのめされた今、イスラエルは恒久的な停戦とガザからの撤退と引き換えに、人質全員の返還という取引に合意し、国際的な正当性を取り戻すことができる」とみている。
イスラエルにとってもうひとつのジレンマは、親イランのイスラム教シーア派組織ヒズボラと戦っているレバノンとの北部国境だ。イスラエルはこの紛争の背後にもイランがいると見ており、外交あるいは武力行使により、自国民を同地域に帰すことができなければならないとしている。
原題:Israel Grapples With New Phase in its Multi-Front War With Iran(抜粋)
関連情報
▽イラン、作戦継続する意思ない-イスラエルも報復自制か<ロイター日本語版>2024年4月14日 20:35 JST
- イラン参謀総長「完全な成果」、攻撃の「作戦を継続する意思ない」
- バイデン氏、イスラエルに報復攻撃支持しないと伝えた-アクシオス
イスラエルと米英仏などの同盟国は、イランが仕掛けた前例のない攻撃をほぼ阻止することに成功した。
イランは13日夜、イスラエルに対し、ドローンとミサイル合わせて300余りを発射。大半はイスラエル領空に入る前に迎撃し、死者は確認されていないという。攻撃による軍拠点の被害も軽微だが、落下してきた金属片でイスラエルの10歳の少女が重傷を負ったという。
バイデン米大統領は攻撃を最も強い言葉で非難すると表明。イスラエル当局者は、イランによる「深刻で危険なエスカレート」だと警告した。
【イスラエル】イラン報復攻撃、大半を迎撃-ハマスは戦闘休止拒否か
ただ、イスラエル、米国ともイランに報復するとは言っていない。イランは今月1日に在シリア大使館敷地内の建物が攻撃され当局者7人が死亡したことを受けて、イスラエルへの攻撃を約束していた。
イランはイスラエルによる強い反応がなければ、一段の攻撃を実行することはないだろうと説明。イスラエル、サウジアラビアなど中東各地の14日の株式相場は下落しているが、下げは小幅にとどまっている。
イランのバゲリ参謀総長は14日、「今回の作戦は完全な成果を収めたとみている。継続する意思はない」と国営放送で述べた。イランには「数十倍の」大規模な攻撃を実行する能力があるが、意図的に攻撃を抑えたとも語った。
同国外務省はX(旧ツイッター)に、攻撃から利益を保護することにためらいはないとしつつ、現時点で作戦を継続するつもりはないと投稿した。
米ホワイトハウスの発表文によると、バイデン大統領は14日、「一致した外交的対応を打ち出すため」主要7カ国(G7)首脳と協議する。
米大統領がイスラエル防衛表明、首相と電話会談-G7首脳会議招集へ
バイデン氏はイスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、同国に対する米国の支持は「揺るぎない」とあらためて強調した。だが、ニュースサイトのアクシオスがホワイトハウスの匿名当局者の話として報じたところでは、イランに対するイスラエルの報復攻撃を米国は支持しないとバイデン氏は述べたという。
イスラエルは14日午後、閣議を開いて対応を協議する見通し。
原題:Mideast Enters Dangerous New Phase With Iran’s Attack On Israel(抜粋)
▽G7首脳、イスラエル攻撃巡りイラン非難 不安定化阻止に決意<ロイター日本語版>2024年4月15日午前 7:08 GMT+9