長崎1区、島根3区、東京15区の衆議院補欠選挙が公示された。焦点はただ一つ。裏金疑惑に揺れる自民党が3選全敗となるか、保守王国・島根1区で1議席を確保できるか、その一点にかかっている。島根1区は前衆議院議長の細田氏の死去に伴うもの。長崎3区と東京15区はいずれも、政治資金規正法違反に絡んだ前職議員の辞職に伴うもの。島根1区の細田氏は元々安倍派の前会長。裏金疑惑は同会長の在任中に起こっており、その意味では3選挙区とも政治資金の不正に絡んだもの。肝心の裏金疑惑の真相は依然として藪の中。政治資金の不正に絡んだ疑惑の真相が解明できないこと自体、日本の捜査当局、政権与党である自民党、国会の機能不全を象徴している。そんな中で実施される補選だ。政権与党の疑惑に有権者がどのような判断を下すのか、投開票日の28日に民意が明らかになる。

3補欠選挙の中で最も注目を集めているのが東京15区だ。前議員の柿沢未途議員の引責辞任に伴うものだが、ここにきて小池百合子東京都知事の経歴詐称問題が再浮上、補選の様相は一変した。中央政界が疑惑で揺れ動く中で、機を見るに敏な小池氏のこと、自ら出馬するのではとその動向が注目されていた。自身の出馬を見送る見返りに都民ファーストの会の副代表である乙武洋匡氏を出馬させた。その矢先に学歴詐称問題が表面化、乙武氏は公示直前に無所属での出馬に切り替えたものの、戦う前に事実上の沈没という憂き目にあっている。とはいえ、3つの補選の焦点は東京15区ではない。自民党が候補者の擁立を見送った長崎3区と東京15区はすでに不戦敗が決まっている。自民党が新人を擁立した島根1区。ここが裏金疑惑に揺れる自民党の近未来を占う最大の注目選挙区ということになる。

立候補したのは自民党新人で公明党が推薦する元中国財務局長の錦織功政氏(55)、立憲民主党の元衆議院議員・亀井亜紀子氏(58)、諸派の新人で社会福祉法人理事長の佐々木信夫氏(85)の3人。事実上自民党と立憲民主党の与野党直接対決だ。島根1区に限らず島根県は長年の保守王国。これだけの疑惑の中で実施される補欠選挙でも自民党を選ぶのか、島根1区の有権者が直面している切実な選択だ。逆にいえば立憲民主党がここで敗れるようなことになれば、政権奪取を目指す同党の存在そのものに疑いの目が向けられる。泉健太代表も鼎の軽重が問われるだろう。島根1区の有権者数は直近(4月15日現在)で26万1000人強。この有権者が自民党に鉄槌を下すのか、疑惑政党の再生に日本の未来を託するのか、28日に投開票が行われる補欠選挙で問われているのはその1点だろう。

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