今年のゴールデンウィークは財務省による円安介入のサプライズで始まった。ブルームバーグの推計によると4月29日に行った介入の規模は5兆5000億円規模と見られている。同省は今のところ介入の有無を明らかにしていないが、一挙に5円の円高に振れる相場の動きは介入以外にあり得ない。市場介入は2022年9月以来。5兆円を超える規模の介入となれば同年10月の5.6兆円に次ぐ規模。前例踏襲の介入と言っていいだろう。学習効果もなければ市場へのインパクトもない。介入を指揮している財務省の神田眞人財務官の資質も問われるだろう。それ以上に日本が直面している円安は投機に起因したものではなく。日本経済の構造的な問題だ。財務省がどんなにカネ金をつぎ込んでも、介入で円安は止まらない。そして岸田政権並びに自民党は、円安を誘引する日本経済の構造問題に手をつけようとしない。

こうした現状を見るにつけ岸田政権の狙いは日本の弱体化ではないか、そんなことを勘ぐりたくなる。28日に終了した金融政策決定会合後の記者会見で植田日銀総裁は目先の円安について、「現時点では無視できる動き」と突き放した。円安防止策を期待したメディアはこの発言も無視。ピントがズレたメディアの報道にいちいち目くじら立てても仕方がない。むしろ個人的には植田総裁の発言が円安の構造問題を指摘している気がする。ひょっとすると同総裁は政府の無策ぶりに警告を発しているのかもしれない。同総裁の解説。円安は輸入物価の高騰を通して物価を押し上げる力がある。これが「第1の力」。この力が浸透して基調的な物価に上昇圧力がかかる。これが「第2の力」、第2の力を通して「基調的な物価」が上昇すれば金融政策を変更すると説明した。現時点では円安がどんなに進んでも第2の力は弱く、基調的な物価が一気に上がる状況ではない。だから「円安は無視できる」という。

要は「第1の力」から「第2の力」への波及力が弱いのだ。なぜ弱いのか?ここに日本経済の根本的な構造問題が潜んでいる。構造要因はごまんとある。例えば、中小企業は物価がどんなに上がっても販売価格に転嫁できない。なぜなら発注者の大企業が値上げを受け入れないからだ。一部の大企業では改善の動きが出始めている。だが大半は原価を下げるため、あるいは原価上昇を阻止するために下請けの中小企業に円安の負担を押し付けている。大企業は大幅な賃上げが実現しているが、中小企業は賃上げどころか、円安に伴う原価上昇分を販売価格に転嫁できないのだ。これは日銀の金融政策では解決できない。政府が真正面から取り組む構造問題なのだ。ここに手をつけないと円安が止まらない。だが官僚も政府も与党も知ってか知らずか、構造改革に動こうとはしない。ブルームバーグは「170円も視野に入ってきた」と警鐘を鳴らしている。

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