関根裕之、船曳三郎
- 当座預金の財政要因はマイナス4.4兆円の予想、市場の推計値と開き
- 1日に2円も3円も動くようであれば追加介入の可能性-住友生命
円相場が一時1ドル=153円台へ急伸した日本時間2日早朝の外国為替市場で日本の通貨当局は円買い介入を行っていた可能性が高い。日本銀行が2日公表した7日の当座預金増減要因の予想値と市場の推計値に大きな開きがあり、介入が要因とみられる。
為替取引の決済の結果は、介入が行われた場合、7日の日銀当座預金残高の見通しに表れる。為替介入などが反映される財政等要因の減少額は4兆3600億円。東京短資では7000億円程度、上田八木短資では1.1兆円の減少を予想しており、平均との差額である約3.5兆円が介入の規模と推定される。
東短リサーチの高井雄一郎研究員は、「財政等要因の数字の下振れが大きく、3兆円程度の円買い介入を実施した可能性が高そうだ」と指摘。為替市場が薄いところで実施したとの見方も出ていた中で、「前回4月29日よりやや少ないというのはイメージに合う」と述べた。
円相場は2日午前5時から6時までに157円台から153円ちょうど付近まで急伸した。先月29日に続いて日本の介入観測が高まる中、神田真人財務官は「為替介入の有無については今、お話できることはない」とブルームバーグの取材に答えていた。日銀の当座預金残高の予想値が市場の推計値との差が大きければ、介入が実施されたとみられるため同データに再び注目が集まっていた。
三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、3兆円程度の介入の可能性を指摘し、「市場取引がかなり薄い時間帯に入ったということもあって、かなり小さい金額で値幅が相応に出たという印象がある」とした。米連邦公開市場委員会(FOMC)の直後でも、日本時間でなくても24時間体制で介入するとの警戒感を与えることにより、日本の連休や米雇用統計の発表を控える中で一定のけん制をしたかったのではないかとの見方を示した。
米CMEグループが電子メールで質問に回答したところによると、ドル・円は同社のプラットフォーム(EBSスポット取引)上で米国市場の取引が終了する日本時間2日午前6時までに420億ドル(約6兆5200億円)余りが取引された。このうち約8割を占める332億ドル余りが午前5時から6時の間に行われた。
29日のドル・円スポット取引高は12兆円、2016年以来の大きさ-CME
先月29日の介入観測については、日銀のデータを踏まえると、5.5兆円規模の円買い介入が実施されていた可能性が高い。日本政府が2022年9月と10月に3回にわたり実施した総額9.2兆円の円買い介入のうち、過去最大の5.6兆円を投入した10月21日の介入に匹敵する規模とみられる。
住友生命保険の武藤弘明エコノミストは、介入の効果は一時的としながらも、当局は「160円というのは看過できないショッキングな水準とみている」と指摘。「1日に2円も3円も動くような相場であれば、追加介入をしてくる可能性はある」と述べた。
4月26日-5月29日における為替介入の有無は財務省が5月31日に公表する外国為替平衡操作の実施状況で明らかになる。4月29日と5月1日の介入の有無は8月ごろ公表される日次ベースのデータで判明する。
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