By James Oliphant, Gram Slattery
[フィラデルフィア 11日 ロイター] – 11月の米大統領選に向け、民主党候補ハリス副大統領(59)と共和党候補トランプ前大統領(78)が10日夜、初のテレビ討論会に臨み、経済、内政、外交など幅広い問題を巡り論戦を繰り広げた。ハリス氏の鋭い舌鋒に、トランプ氏は苛立ちをみせ守勢に立たされる場面もあった。
<握手>
初対面の両氏がどのように挨拶を交わすのかという問題にハリス氏が決着をつけた。同氏は演壇のトランプ氏に歩み寄り、手を差し伸べ、「カマラ・ハリス」と名乗った。トランプ氏は握手に応じるしかなかった。
<トランプ氏苛立つ>
ハリス氏は陣営の作戦通り、トランプ氏を苛立たせた。
視聴者にトランプ氏の集会に参加してみるよう促したハリス氏は、トランプ氏は集会で風車ががんの原因になるなどという奇妙な主張を展開し、聴衆はあきれて帰ってしまうだろうと嘲った。実際、トランプ氏が集会でそのような発言をし、聴衆が帰った事例がある。
これに対し、群衆を集めるのが自慢のトランプ氏は明らかに怒り、 「私の集会は政治史上最大の、信じられないような集会だ」と反論。ハリス氏が選挙集会に参加者をバスで呼び寄せていると非難した。
さらにトランプ氏は、不法入国した移民がオハイオ州スプリングフィールドで住民のペットを殺して食べているという誤った主張を展開。この根拠のない主張は、先にトランプ氏の副大統領候補であるJ・D・バンス上院議員らによってソーシャルメディアで拡散されたが、スプリングフィールド市当局が事実無根だと表明。討論会の司会者もトランプ氏の発言後にそのことを指摘した。 もっと見る
トランプ氏の主張を聞いたハリス氏は笑いをこらえながら「極端な話だ」と答えた。
討論会開始から1時間経つ頃には、トランプ氏は絶えず守勢に回っていた。
21年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件について質問されたトランプ氏は「演説を頼まれた以外は何もしていない」と説明。20年の大統領選では自分が当選したと、あらためて虚偽の主張をした。
一方、ハリス氏は「トランプ氏が8100万人の国民から(大統領を)解雇されたことをはっきりさせておこう。彼はそれを受け入れるのに苦労しているが、自由で公正な選挙で有権者の意思を覆そうとする人物を米国の大統領にはできない」と語った。
ハリス氏はさらに世界の指導者たちがトランプ氏を「笑いもの」にしていると発言。トランプ氏が集会で民主党のバイデン大統領を批判したのと同じ言葉で、ハリス氏はトランプ氏を「米国の恥」と呼んだ。
これに怒りを爆発させたトランプ氏は、ハリス氏の民主党候補指名が「無投票」で行われ、ある種のクーデターでハリス氏がバイデン氏と交代したとし、バイデン氏がハリス氏を嫌っていると指摘。これはトランプ氏に大統領の「気質」が欠けているというハリス氏の主張を裏付けるような言動だった。
<司法省の武器化>
両氏は互いに、対立候補を追及するために司法省を「武器化」しようと共謀していると非難した。
トランプ氏は、20年大統領選での敗北を覆そうとした共謀罪や機密文書持ち出しでの起訴、不倫口止め料支払いを巡る文書偽造で有罪評決を受けたことは、全てハリス氏とバイデン氏によるでっち上げの結果だと主張したが、その証拠は何もない。
一方、ハリス氏は、トランプ氏が再選した場合に対立候補を起訴すると約束したことに触れて反撃。トランプ氏が「憲法を破棄すると公言している人物であることを理解してほしい」と語った。
両氏とも、対立候補は民主主義そのものに対する脅威だと主張した。
<人種問題>
討論会の終盤、長年の懸案である人種問題が議論された。トランプ氏は、ハリス氏の人種を巡り公の場で疑問視した理由について司会者から質問されると「彼女が何人でも私は構わない」と述べた。
ハリス氏は、トランプ氏が長年、米国を分断するために人種を利用してきたと非難。トランプ氏と父親が1970年代に黒人の賃借人を追い返したこと、米国生まれのオバマ元大統領が米国市民かどうか公然と疑問視したことなどを挙げ、「大統領を目指す人物が、そのキャリアを通じて一貫して人種問題によって米国民を分断しようとしてきたのは悲劇だと思う」と述べた。
トランプ氏は反論する代わりに、経済に話を戻した。
<ウクライナ戦争>
最も白熱した政策討論の一つは、ロシアによるウクライナ侵攻への米国の対応で、両氏は激しく衝突した。
トランプ氏は司会者に回答を促されても、ウクライナに戦争に勝ってほしいとは言わず、できるだけ早く紛争を終結させたいと述べるにとどめた。
ハリス氏はトランプ氏が本当に望んでいるのはウクライナの迅速かつ無条件の降伏だとしてトランプ氏を攻撃。また、紛争解決のためにロシアのプーチン大統領と協議するようバイデン大統領から派遣されたというトランプ氏の主張を否定。プーチン氏と会ったことはないが、ウクライナのゼレンスキー大統領とは何度か会ったと述べた。
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