Rita Nazareth

  • S&P500種は午後に下げ拡大-トランプ氏の関税巡る方針で
  • 円は午後に急伸、通貨に関するトランプ氏の発言に反応

3日の米株式相場は大幅安。経済指標が低調だったほか、トランプ米大統領が主要貿易相手国に対する関税賦課の姿勢を改めて示したことで、ウォール街のリスク許容度が再び圧迫された。S&P500種株価指数が今年に入り最大の下げとなった一方、国債は上昇した。円は午後に上げを拡大し、一時1ドル=149円台前半を付けた。通貨に関するトランプ氏の発言に反応した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5849.72-104.78-1.76%
ダウ工業株30種平均43191.24-649.67-1.48%
ナスダック総合指数18350.19-497.09-2.64%
US Stock Futures Slump After Trump Follows Through On Tariffs
株は今年最大の下げSource: Bloomberg

  S&P500種は午後に下げ幅を拡大。トランプ大統領は、メキシコとカナダに対し4日に発動予定の25%関税の停止を交渉する「余地は全くない」と述べた。またホワイトハウスは、トランプ氏が中国に対し、10%ではなく20%の関税を賦課する措置に署名したと明らかにした。大型のハイテク株が大きく下げたことも全体の重しとなった。ハイテク大手7社「マグニフィセント・セブン」の指数は3.1%安となった。

  ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏は、経済を巡る懸念が広がっており、S&P500種に回復の動きが見られたとしても一時的なものになる可能性が高いとの見方を示した。

  コスティン氏は、S&P500が先週、一時的に年初来の上げを消した際に投資家はエクスポージャーを減らしたが、それでも「戦術的な株価上昇」を示唆するほどのエクスポージャーの低さではまだないとリポートで指摘。「最近の株低迷を完全に覆すためには米国の経済成長見通しの改善が必要だ」と記した。

Stock Traders Hit Risk-Off Button

  ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ氏は「市場では米国の景気減速に対する懸念が高まっている」と指摘。「慎重姿勢を呼び掛けるメッセージに耳を傾ける必要がある。7日の雇用統計の内容次第では、マクロ面でのモメンタム悪化が相場の上昇を抑制する可能性がある」と述べた。

  ゴールドマン・サックスのスコット・ルブナー氏は、相場回復を持続できるだけの強い需要が米国株にあるとは確信できないと指摘。投資家に対し、「最も確信の持てる質の高いテーマの下で機敏に動く」ことを推奨した。同氏は2月、リテール投資家と機関投資家の買いが失速する中で、米株式市場は調整相場入りする可能性があると指摘していた。

  顧客リポートで同氏は、米株相場が安値を付ける可能性のある日として3月14日が「際立っている」と記した。

国債

  米国債は上昇。朝方は一時下げていたが、米供給管理協会(ISM)製造業総合景況指数が低調な内容となったことを受けて上げに転じた。午後に関税を巡るトランプ氏の発言が報じられると、上昇を拡大した。

関連記事:米ISM製造業指数、2月は停滞に近づく-仕入れ価格は大幅上昇 (2)

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.45%-4.2-0.94%
米10年債利回り4.15%-5.7-1.35%
米2年債利回り3.95%-3.9-0.99%
  米東部時間16時50分

為替

  外国為替市場ではドルが下落。一方で、ユーロはアウトパフォームした。欧州での防衛費増額に対する楽観が広がった。英国やフランス、イタリアを含む欧州の数カ国は、「戦後」ウクライナの安全保障に向けて、英国が提唱する「有志連合」の結成を試みている。円は1ドル=149円台に上昇した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1292.34-5.78-0.45%
ドル/円¥149.45-¥1.18-0.78%
ユーロ/ドル$1.0488$0.01131.09%
  米東部時間16時51分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.7%下げたが、ニューヨーク時間の午後に下げを縮小。トランプ大統領がメキシコとカナダに対する関税の方針を改めて示したことが手掛かり。

  TDセキュリティーズの外為戦略の世界責任者マーク・マコーミック氏は、同社は短期的にはドルに対して戦術的に強気であり、向こう6-12カ月については弱気だと、ブルームバーグテレビジョンに対し語った。

  テクニカル指標を見ると、ブルームバーグ・ドル指数の1325への上昇が示唆されるとマコーミック氏は指摘。「ポジショニングと、バリュエーションを動かす要素の一部を改めて見てみると、現在はドルが極めてショートされている状況と言える」と述べた。

  トランプ氏はこのほか、「外国産」農産物への関税を4月2日に発動すると明らかにした。輸入品への関税賦課を警告する最新の動きとなる。

  円は対ドルで上昇。朝方は一時下落していたが、その後に反転。150円台前半で推移していたが、トランプ氏が通貨が弱い国に関して発言する中で円に言及すると、上げを拡大し一時149円10銭を付けた。

関連記事:トランプ氏、日本や中国が通貨安政策取るなら米国は不利な立場に

ドル・円の推移

原油

  ニューヨーク原油先物相場は続落。年初来安値を付けた。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが生産引き上げを4月に開始するとブルームバーグが報じたため、売りが膨らんだ。

関連記事:OPECプラス、4月からようやく供給引き上げへ-トランプ氏が圧力

  複数のOPECプラス参加国代表によると、4月から生産を日量13万8000バレル引き上げる。OPECプラスは2022年に供給を抑制して以来、3回にわたり生産引き上げを延期してきた。トランプ大統領はOPECプラスに供給を増やすよう圧力をかけている。

  原油の2大消費国である米国と中国のエネルギー需要の見通しが暗い中、今年後半には供給過剰になるとみられ、生産引き上げは再び延期されるとの見方が強かっただけに、予想を覆す動きとなった。トランプ大統領が貿易戦争をちらつかせたことで市場の悲観論が強まり、売買高が減少。ヘッジファンドによる買越幅は2010年以来の低水準となっている。

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  ストラテガス・セキュリティーズのアナリスト、ジョン・バーン氏はOPECプラスの予想外の動きについて、「OPECが市場シェアを取り戻す反面、米国の供給量が今後1年間に減少する可能性を裏付けるものだ」と述べた。しかし、トランプ政権による追加制裁でイラン産原油の供給量が縮小すれば、OPECの供給量増加がその埋め合わせになる可能性もあると付け加えた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は前営業日比1.39ドル(2%)安の1バレル=68.37ドル。ロンドンICEの北海ブレント5月限は1.6%下げて71.62ドル。

  金スポット価格は反発。トランプ大統領が主要貿易相手国に対して輸入関税を引き上げる用意を進める中、不透明な経済見通しを考慮して買いが入った。先週は週間で今年初のマイナスとなっていた。

  ISM製造業指数はトランプ大統領の政策がすでに冷え込みの兆しを見せている経済をさらに悪化させるのではないかとの懸念を強めた。このシナリオ通りになれば、金の安全資産としての地位は高まる。

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  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時3分現在、前営業日比22.69ドル(0.8%)高の1オンス=2880.52ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は52.60ドル(1.9%)高の2901.10ドル。

原題:S&P 500 Sees Worst Selloff in 2025 as Bonds Climb: Markets Wrap(抜粋)

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