▽ドイツ緑の党、メルツ氏の防衛・インフラ計画支持しないと表明<bloomberg日本語版>2025年3月10日 20:14 JST
Arne Delfs
- 憲法改正に必要な3分の2の賛成票、確保できない見通しに
- メルツ氏陣営は土壇場での合意に期待、財務相も「楽観」
ドイツの緑の党は、次期首相就任が有力なメルツ・キリスト教民主同盟(CDU)党首が打ち出した数千億ユーロに及ぶ防衛・インフラ支出パッケージを支持しないと表明した。メルツ氏の看板政策が廃案に追い込まれる恐れが出てきた。
先月の選挙で勝利し、連立交渉を進めるメルツ氏だが、この政策の成立には借り入れ制限を緩和する憲法改正を伴うため議員の3分の2の賛成票が必要で、緑の党の支持も欠かせない。トランプ米大統領が欧州安全保障への関与を後退させる中で、5000億ユーロ(約80兆円)に上るメルツ氏の支出計画は欧州の防衛を強化する大きな一歩になるとして、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国から歓迎された。

緑の党の指導者たちは、次期政権の連立協議で蚊帳の外に置かれ、気候変動対策など同党の優先政策が無視されているとして、メルツ氏らを強く非難。同党のブラントナー共同党首は、新政府の「選挙の贈り物」の配給を助ける気はないと述べた。
ただ、さらなる協議の余地は残し、独自の法案を提出する意向を示した。メルツ氏陣営および、連立相手として交渉が進む社会民主党(SPD)は10日遅く、ベルリンで緑の党の議員らと会合を開く。
事情に詳しい関係者によると、緑の党に対するメルツ氏の扱いを巡り、同氏陣営の内部からも批判的な声がある。同氏は長年敵意を抱く緑の党に対して、感情的な知性を欠いていると関係者の1人は述べた。
緑の党の強硬な拒否にメルツ氏陣営は不意を突かれたが、土壇場で合意できる余地はまだあるとみていると、CDU当局者は発言。SPD当局者も、週内の合意は可能だろうとの見方を示し、緑の党は政治的な力を行使して要求を引き上げていると指摘した。関係者は全員、交渉は非公開で進んでいるとして匿名を要請した。
クキース財務相はブリュッセルで記者団に対し、「このような状況で、懸念や要求があるのは完全に普通だ」と述べ、「NATOの欧州の柱として防衛努力を強化し、インフラ支出を増やさなければならないという2つの目標で、最終的には合意が得られると自分は楽観している」と続けた。
緑の党が反対を表明した後、ドイツ国債は上げを広げ、10年物利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.77%を付けたが、引けまでに上げを縮小した。ユーロもドルに対して一時下落したが、前日終値付近で推移している。
原題:German Greens Reject Defense Spending Plan Ahead of Talks (1)(抜粋)