▽消費者物価は3カ月連続で3%台、予想上回る-日銀利上げ観測後押し
伊藤純夫
- 2月コアCPI3.0%増に伸び鈍化、電気・都市ガス代の補助金復活で
- コアコア2.6%上昇に伸び拡大、総合は3.7%上昇に縮小も予想上回る
2月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、電気・都市ガス代の補助金復活で前年比の伸びが鈍化した。市場予想を上回る3カ月連続の3%台となり、日本銀行の追加利上げ観測を後押ししそうだ。
総務省の21日の発表によると、コアCPIは前年比3.0%上昇した。市場予想は2.9%上昇。生鮮食品を除く食料が5.6%上昇に伸びが拡大し、このうちコメ類は80.9%上昇と過去最大の上昇幅となった。一方、エネルギーは電気・都市ガス代の伸び縮小で6.9%上昇に鈍化した。エネルギーも除くコアコアCPIは2.6%上昇に伸びが拡大し、市場予想と一致した。
日銀は19日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決めた。植田和男総裁は予想内で強めの春闘の集計結果を含めて賃金・物価は想定通りとする一方、海外発の不確実性が急速に高まっているとし、追加利上げはデータ次第で判断していく姿勢を示した。今回の消費者物価は日銀の政策正常化路線の継続を支える内容と言える。
明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは、日銀にとっては引き続きオントラック(想定通り)だとし、「金融政策の正常化路線を妨げるような結果ではない」と指摘。次回利上げは7月とみており、トランプ米大統領の関税政策の不透明感がもう少し晴れていくかどうかが、先行きの利上げ判断で「一番重要な要素となる」と語った。

コアCPIの伸びが予想を上回ったことを受けて、21日の債券相場は下落し、新発10年債利回りは1.5ベーシスポイント(bp)高い1.53%。円相場は一時1ドル=148円59銭まで小幅上昇したが、その後は149円台まで円安に振れて推移している。
コア指数を上回る伸びが続く総合指数は3.7%上昇と伸びが縮小したものの、市場予想(3.5%上昇)を上回った。4%割れは2カ月ぶり。生鮮食品は18.8%上昇と前月の21.9%上昇から伸びが縮小した。日銀では、近年の生鮮食品を含む食料品の価格高騰がインフレ期待に波及しないか動向を注視している。
賃金動向を反映しやすいサービス価格は1.3%上昇となり、前月の1.4%上昇からプラス幅が縮小した。植田総裁は19日の記者会見で、「サービス価格の上昇はそれほど強いものではない」との認識を示した。
連合が14日に公表した今春闘の第1回回答集計の平均賃上げ率は5.46%と前年の初回集計の5.28%を上回った。1991年の最終集計の5.66%以来の高水準となり、賃金と物価の好循環の持続が期待されている。
総務省の説明:
- 電気・ガス料金負担軽減支援事業の開始がなかった場合は、総合が4.0%上昇、コアが3.3%上昇
- 生鮮食品はキャベツやトマト、ブロッコリー、レタスなどで上昇幅が縮小
- サービス価格の鈍化は通信・教養娯楽関連サービスのうち、宿泊料が日並びの関係で上昇幅が縮小、外国パック旅行でアジアなど一部旅行先の価格下落が要因
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