▽【米国市況】S&P500小反発、ハイテク銘柄に買い-ドル149円台前半
Rita Nazareth
- S&P500種は一時1%安、取引終盤で急速にプラス圏に浮上
- 不安定な相場は今年後半まで続く-モルガンSのウィルソン氏
21日の米株式市場でS&P500種株価指数はほぼ横ばい。日中は売りが先行して1%を超える下げとなる場面もあったが、大型ハイテク株の上昇に後押しされる格好で終盤に前日比プラス圏に浮上した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5667.56 | 4.67 | 0.08% |
ダウ工業株30種平均 | 41985.35 | 32.03 | 0.08% |
ナスダック総合指数 | 17784.05 | 92.42 | 0.52% |
大型ハイテク銘柄の一角であるテスラは5%を超える上昇。ボーイングは米国の次世代戦闘機を設計・製造する契約を獲得したことが好感され、約3%上昇した。一方で前日に発表した業績見通しが失望を誘ったフェデックスとナイキはさえない。

景気減速や関税への懸念、地政学リスクやハイテク株のバリュエーション高騰を背景に、米株式市場では動揺が続いてきた。
モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、株式市場が不安定な状況は少なくとも今年後半まで続き、株価は先月に付けた最高値を下回ったまま推移する公算が大きいと指摘。「回復は段階的に進むとみられ、今年前半に最高値を再び更新することは恐らくあり得ないだろう」とブルームバーグTVとのインタビューで語った。
米株式市場が貿易摩擦や経済減速への懸念で打撃を受けるなか、個人投資家は損失が膨らんでもひるむことなく、むしろ買い増しを続けている。JPモルガン・チェースのデータによると、19日までの1週間に個人投資家は120億ドル(約1兆8000億円)余りを米株に投資した。同行のグローバルクオンツ・デリバティブ担当ストラテジスト、エマ・ウー氏は過去12カ月の平均を大きく上回る買いのペースだとしている。
関連記事:不安定な動き続く米株市場、個人投資家の買い意欲は衰えず
またバンク・オブ・アメリカ(BofA)のマイケル・ハートネット氏によれば、世界の株式市場には「モンスター級」のマネー流入が続いており、全面的な貿易戦争が株式に及ぼし得るリスクは心配されていないという。
関連記事:株式に「モンスター級」のマネー流入、関税の心配よそに-BofA
デニス・デブシェール氏率いる22Vリサーチのアナリストは「VIX(恐怖指数)やスプレッドはリセッション(景気後退)ではないものの、不確実性の高い経済環境に見合った水準まで戻ってきており、それが株式市場の内部環境の改善を後押ししている」と分析。「これは、米経済が急速にリセッションに向かっているわけではないという当社の見解と整合している」とした。
4月2日発表の相互関税に対する懸念は高まっているが、同社のキム・ウォレス氏は「実際の通商政策リスクは昨年12月時点よりも現在の方が低い」と指摘。交渉が進む中で不確実性は依然として高く、発表される内容は懸念材料となり得るが、最終的な関税の水準は当初予想よりも低くなるとの予想を同氏は示した。
国債
米国債相場はまちまち。10年債利回りは約1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した一方、政策金利動向に敏感な2年債利回りはこの日も低下した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.59% | 3.5 | 0.78% |
米10年債利回り | 4.25% | 1.1 | 0.26% |
米2年債利回り | 3.95% | -1.3 | -0.34% |
米東部時間 | 16時39分 |
シカゴ連銀のグールズビー総裁はこの日、関税に起因するインフレへの打撃は一過性のものに終わる可能性があると述べた。その上で、関税の規模が拡大し、他国からの報復があれば、連邦公開市場委員会(FOMC)としては対応を余儀なくされるかもしれないと語った。
関連記事:シカゴ連銀総裁も「一過性」の予想、ただ関税恒久化しないことが前提
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、移民や貿易、財政の急速な政策変更が経済にどのような変化をもたらすのかを巡って高いレベルの不確実性があるが、現行の金融政策スタンスは適切で、米金融当局は状況の変化に対応できる好位置にいられるとの考えを示した。
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為替
外国為替市場ではドルが上昇。週間ベースでも3週間ぶりに上昇した。関税リスクや欧州の地政学的不安が予想される週を前に、投資家は安全資産への逃避に動いた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1271.08 | 3.26 | 0.26% |
ドル/円 | ¥149.36 | ¥0.58 | 0.39% |
ユーロ/ドル | $1.0812 | -$0.0039 | -0.36% |
米東部時間 | 16時39分 |
マネックスのストラテジストは今週の相場を振り返り、「主要中央銀行による政策据え置きと貿易の先行き懸念によって特徴付けられた」と指摘。「目まぐるしく変化する環境下では、先を見据えた計画を立てるのが難しく、それが外為相場でのフローの不安定さに現れている」と続けた。
円相場は対ドルで149円台前半に下落。ニューヨーク時間の朝方には1ドル=148円台半ばまで買い戻される場面もあったが、勢いは続かなかった。

外国為替市場では、ドナルド・トランプ氏が昨年の大統領選に勝利して以来初めて、投機筋がドルに対して弱気な姿勢に転じている。米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータ(3月18日終了週)によると、ヘッジファンドなど投機筋によるドルショートが9億3200万ドル(約1390億円)規模に達した。
関連記事:投機筋がドルショートに転じる、トランプ氏勝利以来-不透明感が重し
原油
ニューヨーク原油先物相場は小幅続伸。需給を巡って相反するシグナルを見極めようとする動きが続いた。
米国はイラン産原油を購入していた疑いで中国の製油所とその最高経営責任者(CEO)を制裁対象に加えた。市場では原油供給に障害が生じる事態が意識されており、RBCキャピタル・マーケッツのアナリストは「リスクプレミアムが一段と真剣に受け止められている」と指摘した。
関連記事:トランプ政権、中国の製油所を初めて制裁対象に-イラン産原油購入で
一方で、景気減速とこれに伴う原油需要への影響も懸念されており、相場の重しとなっている。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が来月から供給を拡大する予定であることも、今週の原油相場の上値を抑えた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は、前日比21セント(0.3%)高の1バレル=68.28ドルで終了した。週間では2週連続のプラス。ロンドンICEの北海ブレント5月限は0.2%上げて72.16ドルで引けた。

金
金スポット価格は続落。貿易戦争を巡る懸念を背景とする金への逃避買いの流れが細った。
この日は幅広い業界からさえない決算が相次いだことで米企業への懸念が台頭し、S&P500種が下落。投資家が流動性の確保に走ることで、金相場は短期的に株安から逆風を受ける可能性がある。
ただ、金スポット相場は週間では1%余り上昇。20日には1オンス=3057.49ドルまで買われ、最高値を更新した。年初来では15%値上がりしており、これまで最高値を15回更新している。トランプ氏の関税政策の影響を巡って懸念が高まっており、市場は再び不安定な状況に陥っている。4月2日には新たな関税が発表される予定だ。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時56分現在、前日比26.27ドル安の1オンス=3018.63ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は22.40ドル(0.7%)安の3021.40ドルで引けた。
原題:
S&P 500 Wipes Out 1% Slide in Tech-Led Rebound: Markets Wrap
Dollar Extends Weekly Rise Ahead of Tariff Deadline: Inside G-10
Crude Edges Higher as Supply Concerns Outweigh Economic Outlook
Gold Slides From Record as US Stocks See Another Week of Selloff