▽米国の関税巡る威圧にEU最強の対抗措置、フランスが検討求める

Samy Adghirni、Alberto Nardelli

  • 経済的威圧への対応ツール-貿易や投資、公共調達など広い対象範囲
  • トランプ政権、近く相互関税発動―EUのVATなど標的の可能性

フランスは、米国のトランプ大統領が関税を不当に利用して政策変更を迫る場合、フランスは欧州連合(EU)に対し、最も強力な報復措置を検討するよう求めている。

  事情に詳しい関係者によると、フランスが検討を求めているのは、EUの「反威圧措置」(ACI)と呼ばれる、貿易などを通じて経済的威圧をかける国に対して反撃するためのツールだ。発動されたことはない。望ましい手段ではないものの、フランスのほかにも、検討を求める加盟国が少数だがあるという。

  報道後ユーロは一時1.08ドルを下回り、2週間ぶりの安値を付けた。

  米国は4月2日にも、世界中の貿易相手国に対し、広範囲にわたる「相互関税」を課す方針だ。トランプ大統領は、関税は国内規制やEUの付加価値税(VAT)のような税金など、「不公平」だとする非関税障壁を是正するものだとしている。EU側は、VATは公平で差別のない税であり、国内製品と輸入品に平等に適用されると主張している。

  ACIは多くの条件と段階を経る必要があるが、EUは対象国の貿易やサービス、特定の知的財産権、外国直接投資、公共調達へのアクセスなど、幅広い範囲での報復措置を展開できるようになる。

  トランプ氏は今月、鉄鋼とアルミニウムの輸入品に25%の関税を課し、これに対しEUは、米国製品260億ユーロ(約4兆2000億円)相当に報復関税を課すと発表した。4月の相互関税は、米国企業が受けるとされる不利益を相殺するため、貿易相手国ごとに調整される可能性があり、鉄鋼・アルミニウム関税を上回る規模になり得る。

  別の関係者は、EUの執行機関、欧州委員会が今のところはACIを検討していないと述べた。まず4月2日に米国がどのような関税を発表するのか、ACIが適用可能なのかを見極める必要があるため、同措置の使用に関する議論はまだ先のことだという。

  ACIは、EUまたは加盟国の主権的な政策選択を圧迫する手段として、貿易措置を用いる第三国による意図的な措置を阻み、必要に応じて対応することを目的に設計された。 対抗措置はあくまで最後の手段としてのみ想定されており、受けた損害のレベルに見合ったものでなければならない。

  トランプ政権の一期目に、EU製品に追加関税が課されたことを受け、EUは貿易防衛策を強化に取り組み、ACI規則の制定につながった。台湾がリトアニアに貿易事務所を開設したことに対し、中国がリトアニア製品に輸入制限を課す決定を下したことも、導入のきっかけとなった。

  欧州委員会はACIの使用を提案できるものの、実際に経済的威圧を受けた事例があるか、また、その対抗措置が必要か、加盟国が判断することになる。EUは、措置全体を通じ、威圧的措置を取る当事国と協議して解決策を見いだすことを目指し、また、同様の圧力に直面している、価値観を共有する国々と協力することもある。

原題:France Said to Float Using Most Powerful EU Trade Tool on US (1) (抜粋)