• トランプ関税で金融市場に新たな不確実性、安全資産に資金流入
  • 主要10通貨では円とスイス・フランが堅調、金は4営業日続伸
猛吹雪でニューヨーク証券取引所近くも積雪
猛吹雪でニューヨーク証券取引所近くも積雪Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

23日の米株式市場でS&P500種株価指数は反落。人工知能(AI)が企業収益に与える影響への不安が再燃し、関税を巡る先行き不透明感も重なって投資家のリスク選好が後退した。逃避需要で国債相場と金は上昇した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6837.75-71.76-1.04%
ダウ工業株30種平均48804.06-821.91-1.66%
ナスダック総合指数22627.27-258.80-1.13%

  AIが各業界に及ぼし得るリスクを示したシトリニ・リサーチのリポートが材料視され、テクノロジー銘柄や配送、決済関連株に売りが広がった。ドアダッシュ、アメリカン・エキスプレスはいずれも6%を超える下落。

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  IBMは13%下落し、2000年10月以来の大幅安となった。AIスタートアップのアンソロピックは、自社のエージェント型AIコーディング支援ツール「Claude Code」が、主にIBMの大型コンピューターで稼働するプログラミング言語COBOLの近代化に役立つと表明した。

  モルガン・スタンレー傘下のEトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「AI脅威論はまだ過ぎ去っていないようだ」と語った。 

  インタラクティブ・ブローカーズのスティーブ・ソスニック氏は「ソフトウエア株の下落は、モメンタム主導のセクターが反転したときに何が起き得るかを示している」と指摘。「より大きく、かつ重要な問題は、いくつのセクターが反転すれば、市場全体を巻き込むことになるのかという点だ」と述べた。

  市場では、トランプ政権が打ち出した新たな関税措置がもたらす影響も意識された。トランプ氏は20日の最高裁判断で無効とされた関税に代わる措置として、10%の世界一律関税導入を発表し、その後、関税率を15%に引き上げた。

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  ランズバーグ・ベネット・プライベート・ウェルス・マネジメントのマイケル・ランズバーグ氏は「関税を巡る動きは、年内いっぱい市場のかく乱要因になりそうだ。ただ、昨年4月の当初の衝撃ほどの変動にはならないだろう」と述べた。

  「関税を巡る混乱に伴うさまざまな経済リスクや不確実性を踏まえると、米連邦準備制度理事会(FRB)の様子見姿勢は一段と強まるだろう」と語るのは、BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンゲン氏だ。 

  同氏は、労働市場が安定していることを踏まえると、次回の利下げのハードルは高まっていると指摘。追加の利下げを正当化するには、インフレ鈍化が改めて焦点になると付け加えた。

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  エドワード・ジョーンズのアンジェロ・クルカファス氏は、新たに発表された15%の関税率が経済活動に大きな影響を及ぼす可能性は低いとの見方を示した。

  そのうえで「足元のニュースに過度に反応しないよう投資家に助言する。企業収益の力強い伸びと健全な経済活動に支えられ、世界の株式市場に対しては引き続き前向きな見通しを維持する」と述べた。

国債

  米国債相場は上昇(利回りは低下)。トランプ氏が打ち出した代替関税措置で世界の金融市場に新たな不確実性が広がるなか、安全資産に資金が流入した。

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国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.70%-2.1-0.46%
米10年債利回り4.03%-5.2-1.27%
米2年債利回り3.44%-3.8-1.09%
米東部時間16時36分

  米10年利回りは約5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。米国による対イラン軍事攻撃の可能性も意識されるなか、国債買いは勢いを増した。 

  JPモルガン・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「ここ数日の貿易を巡る不確実性の高まりが、株式市場でのリスク回避の動きと米国債市場での逃避買いの動きをもたらしている」と指摘。「不確実性が高まる局面では、投資家はリスクを落とし、国債を買い進めるべきだ」と述べた。 

  地政学的緊張が高まるなか、投資家は24日に予定されるトランプ大統領の一般教書演説にも注目する。こうした緊張の高まりも、米国債への逃避買いにつながっている。  

  ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、スバドラ・ラジャッパ氏は「地政学的要因が大きい。特にイランを巡る不確実性に加え、一般教書演説を控えて何が打ち出されるのか読めないことが市場で意識されている」と指摘。「経済指標は比較的堅調だが、不確実性は多方面で高まっている」と述べた。

為替

  外国為替市場では、ドルは比較的落ち着いた値動きとなった。トランプ大統領が打ち出した新たな世界的関税の影響を市場参加者は見極めようとしている。

  マネックスのストラテジストはリポートで「米国の通商政策を巡る混乱や、北東部を襲った猛吹雪による経済活動への影響が意識されるものの、ドルは概ねこれまでのレンジ内で推移している」と指摘した。

  米東海岸を襲った強力な冬の嵐により、23日はニューヨークやボストンを含む地域の主要空港で発着便の大半が欠航となった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1189.380.780.07%
ドル/円¥154.73-¥0.32-0.21%
ユーロ/ドル$1.1789$0.00050.04%
米東部時間16時36分

  円相場は対ドルで上昇。総じて1ドル=154円台半ば近辺で推移した。主要10通貨では円とスイス・フランが堅調だった。

  キャピタル・ドット・コムのシニアアナリスト、カイル・ロダ氏はドル売りについて、「米資産に対する信認の揺らぎが続いていることの延長線上にある動きだ」と述べた。

  JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル市場ストラテジスト、ヒュー・ギンバー氏は「ドルの新たな道筋は下方向だ」と指摘。関税による経済的な影響がすぐに表れることはないだろうが、景気はいっそう難しくなるとギンバー氏は指摘し、「企業や投資家が対処しなければならない問題は、増える一方だ」と語った。

原油

  ニューヨーク原油先物相場はほぼ変わらずとなり、終値で昨年7月以来の高値付近を維持した。日中は方向感にやや欠ける展開となった。米軍が中東で軍備増強を進める中、米国とイランは週内に協議を再開する見通しだ。

  トランプ米大統領は、イランに対する限定的な軍事攻撃を検討していると発言。米国務省は、在ベイルート米国大使館の一部職員に退避を命じた。また米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、イランが欧州や中東にある米国関連施設を標的に報復テロを実行する兆候がないか、安全保障当局が監視していると報じた。

  この日はまた、米国株が大きく下げたことも原油の重しとなった。

  こうした強気材料がある一方で、米国とイランは26日に協議を再開する見通しだ。イランのアラグチ外相は22日、CBSに対し、外交的解決の可能性は「十分にある」と発言。一方で、米国の軍備増強がイランに圧力を与えることはないとも述べた。

  従来弱気姿勢を示してきたゴールドマン・サックス・グループは、原油価格見通しを引き上げた。先進国での在庫積み上がりが想定より小さいとの見方が背景にある。それでも足元の水準からは下落すると見込んでおり、年末時点の北海ブレント原油価格は1バレル=60ドルになるとの予想を示した。モルガン・スタンレーも、ブレント原油は時間の経過とともに再び60ドルに向かうとの見通しを示した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は、前営業日比17セント(0.3%)安の1バレル=66.31ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント4月限は0.4%下げて71.49ドル。

  金スポット相場は4営業日続伸。週間ベースでは前週まで3週続伸となっていた。米貿易政策を巡る不透明感の高まりから、市場には動揺が広がっている。

  金は一時2.2%上昇し1オンス=5200を上回った。トランプ米大統領は20日、世界的に10%の関税を課す布告に署名。翌21日には、関税の税率を15%に引き上げると表明した。

  最近の金相場上昇は、1月末から2月初めにかけて急落した分を取り戻す動きとなっている。地政学的緊張の高まりや、国債・通貨に対する投資家の警戒感といった長期的要因が相場を下支えしている。

  オーバーシー・チャイニーズ銀行の投資戦略マネジングディレクター、バス・メノン氏は「中期的には金に追い風となる構造的要因が十分にある」と指摘。一方で「米貿易政策の行方やイラン情勢を巡る展開がまだ不確実なことから、短期的には価格の変動が大きくなるだろう」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時28分現在、前営業日比103.70ドル(2%)高の1バレル=5211.15ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は144.70ドル(2.85%)上昇し5225.60ドルで引けた。

原題:Stocks Hit by AI-Disruption Fears as IBM Tumbles: Markets Wrap

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