▽トランプ氏の関税再編、新たな不確実性-通商協定の行方見えず<bloomberg日本語版>2026年2月24日 at 1:38 JST
- トランプ氏「駆け引きするならさらに高い関税」-米国株下落
- 中国、ひとまず関税率24%に-米国は他の権限使い関税課す可能性

米連邦最高裁がトランプ米大統領の上乗せ関税を無効とした判決を下した。継続中の課税という避けがたい現実が引き続き脅威として残る中、世界各国の貿易相手国が交渉してきた一連の通商協定に、新たな混乱が生じている。
ブルームバーグ・ニュースは23日、欧州連合(EU)の欧州議会が米国との協定の批准プロセスを凍結する方針だと報じた。この報道を受けて、欧州株は取引時間中の安値をつけた。一方、インドの貿易当局者は、通商協定の暫定合意締結のための訪米を延期した。
トランプ氏は23日、自身のソーシャルメディアに「米国を数年、いや数十年にわたって『食い物』にしてきた国々が、ばかげた最高裁の判断をもって『駆け引き』しようとするなら、はるかに高い関税に直面することになる。最近合意したばかりの協定よりも、悪い取引を突きつけられるだろう」と投稿した。
トランプ政権は20日の判決後、従来の関税に代わり、米国への輸入品に一律15%の新たな関税を課す計画を早期に発表した。これにより、中国や英国のような一時的な勝者と敗者が生まれる一方で、実際に米国企業や消費者が支払うことになる、全体の加重平均関税率はわずかに低下する程度だ。
米政府高官は、最高裁の判決により、米国と相手国との合意が崩れることはないとしている。
最近では、グリーンランドの支配権を狙うトランプ氏の試みに対し、欧州が強く反発した。このため、既存の合意からの後退は、新たな駆け引きと混乱を招きかねず、2期目のトランプ氏がもたらす貿易戦争をこれまで何とか乗り切ってきた世界経済にとって、新たな混乱の火種となるリスクがある。
新たな15%の関税は、1974年通商法第122条に基づく。同条項は「大規模かつ深刻な」国際収支の赤字など特定の状況下で、大統領が議会の承認なしに最長150日間関税を課すことを認めている。
RBCキャピタル・マーケッツのマイク・リード氏は「最高裁判決は政権の関税政策への重大な打撃に見えるが、貿易政策は他の手段で推進可能だ」と指摘する。
不透明感の再燃が投資心理を冷やしたことで、米国株は売られ、ドルは0.3%の下落分を取り戻した。とはいえ、2025年4月にトランプ氏が一方的な上乗せ関税を発表し、数カ月にわたる交渉が始まった際の劇的な変動と比べると、動きは小幅だ。
判決は、関税を負担する米企業や消費者にとってほとんど救済にならない。ゴールドマン・サックス・グループのデビッド・メリクル氏らエコノミストは、最高裁判決と新たに発表された15%の関税の組み合わせにより、2025年初頭からの実効関税率の上昇幅が10ポイント強から9ポイントに縮小すると試算している。
不確実性
シンガポールのガン副首相は22日のブリーフィングで、最高裁判決と新たな15%関税について「私たちが今、極めて予測不能で不確実な事業環境に直面していることを痛感させるものだ。真のキーワードは不確実性だ」と語った。

ガン氏によると、シンガポール政府は、新たな15%のグローバル関税が同国に適用されるかどうかについて、米国当局に明確化を求める方針だ。シンガポールは従来の枠組み下では、最低税率となる10%のベースライン関税が適用されていた。
一方で、英国やオーストラリアなど、通商合意より高い関税に直面する経済圏もある。アジア地域の多くの当局者は、様子見の姿勢を続けている。
インドネシア大統領府は21日、プラボウォ大統領が「あらゆる可能性に備えている」との声明を発表した。インドネシアは、19日に米国との合意を最終決定したばかりだ。
韓国大統領府はブルームバーグの問い合わせに対し、情勢を注視しており、国益に最も資する方向で対応すると回答した。日本の自民党の重鎮は、米国の関税措置を「本当にひどい」と評した。
関連記事:米最高裁の関税違法判決に各国慎重な反応-米国の次の一手注視(1)
代替手段
チェタン・アーヤ氏率いるモルガン・スタンレーのエコノミストによると、アジア向けの関税率は加重平均で20%から17%、中国産品への関税は平均32%から24%に下がる見込みだ。トランプ政権は関税体制を再構築し、業種別・経済圏別関税の導入を目指すため、この緩和は一時的な可能性もある。
米連邦最高裁の判断は、中国の習近平国家主席にとっては勝利となるが、中国当局の反応は慎重だ。商務省報道官は23日、「動向を注視し、自国の利益を断固として守る」と述べた。トランプ氏は3月31日に訪中する。
米国はこれまで、通商法第301条と第232条に基づいて中国製品や自動車、金属を調査し、関税賦課に利用してきた。こうした代替的な法的権限により、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とした関税を無効とする判決にもかかわらず、トランプ政権にはさらなる関税を課す可能性が残されている。
米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のマネージングディレクター兼公共政策責任者のリビー・カントリル氏は「トランプ氏は関税が効果的で、貿易赤字は悪だと本気で信じている。同氏が持つ手段を考慮すれば、トランプ氏がホワイトハウスにいる限り、関税と通商政策の不確実性は続くと予想すべきだ」と述べた。
原題:Global Trade Confusion Returns as Trump Overhauls Tariff Toolkit(抜粋)
▽欧州議会、米EU通商協定の批准を凍結-米国に新関税の明確化求める<bloomberg日本語版>2026年2月23日 at 20:29 JST
- トランプ氏の関税15%の方針に疑問-通商協定の尊重確認する考え
- 米EU通商協定、昨夏に首脳間合意-完全実施はまだ

欧州連合(EU)の欧州議会は23日、米国との通商協定の批准を凍結すると決定した。米連邦最高裁が、上乗せ関税を無効とする判決を下した後、トランプ米大統領は世界各国に新たな関税を課す方針を示しており、EUは米国に詳細情報を求めている。
欧州議会貿易委員会のランゲ委員長は、23日の会議で「私たちは現状について、明確さを求めている。米国が協定を尊重していることを明確に確認したい。それが重要な要素だからだ」と語った。
米EU通商協定は昨年夏に合意に達したものの、完全には実施されていない。もし協定が破棄されれば、トランプ氏のウクライナへの支援に対する姿勢や、グリーンランドの支配権を求める動き、EU指導者らに対する厳しい発言などにより、すでに傷ついている米EU関係に、再び亀裂が入る恐れがある。
最高裁の判決を受け、トランプ氏は世界各国に10%の関税を課すと表明し、その後さらに15%に引き上げるとした。米国の貿易相手国には多くの疑問が残る内容で、米国の政策に関する経済的な混乱と不確実性が増している。
欧州の当局者は、米国の今後の関税戦略について説明を求め、そのうえで判断を下す方針だ。
EUの執行機関・欧州委員会の報道官は23日「これらの新たな動きがEUと米国の貿易関係に何を意味するのか、完全に明確にすることが必要だ。EUとして次の対応を判断するには、これが最低限の条件だ」と語った。
主要7カ国の貿易担当相も23日に電話会議を開いた。EUのシェフチョビッチ欧州委員(通商担当)は、会議の場で「米国との通商協定への完全な尊重が最優先事項だ」と強調したと、X(旧ツイッター)で明らかにした。EU加盟国大使も23日に会合を開き、対応を協議する予定だ。

米EU通商協定は、トランプ氏と欧州委員会のフォンデアライエン委員長が2025年夏、EUの米国向け輸出品の大半に15%の関税を課す一方、米国産工業製品への関税を撤廃することで合意した。米国は、欧州産鉄鋼・アルミニウム製品への50%の関税を継続する方針も示した。
EUは、米国との全面的な貿易戦争を回避し、ウクライナをはじめとする安全保障上の問題で米国からの支援を維持したいとの思いから、不均衡な合意を受け入れた。
だがその後、米国が50%の金属関税の対象を拡大したことを受け、欧州議会は通商協定の迅速な批准を拒み、協定は部分的にしか実施されていない。
トランプ氏が以前、グリーンランドの併合をほのめかした際にも、欧州議会は通商協定の批准プロセスを凍結した。
原題:EU Halts US Trade Deal as Tariff Turmoil Injects Uncertainty (抜粋)