猛暑と集中豪雨と災害。今年の日本を取り巻く異常気象をめぐってメディアは連日かなりの時間を割いてこの問題を取り上げている。とりわけテレビ局の力の入れようは異常気象並みの“異常”ぶり。異常気象の解説に長時間を費やし、西日本の被災地を克明に追いながら「早めに避難を」と電波を通して国民に呼びかけている。そのこと自体に特に口を挟むつもりはないが、この異常気象は2年後の2020年にも及ぶ可能性が強い。東京オリンピック・パラリンピックは異常な高温・多湿の中で実施されそうなのである。それを知りながらテレビ局はどうして開催時期の変更を呼びかけないのだろうか。かねて疑問に思っていたことにロイター通信が昨日答えてくれた。

「焦点:東京五輪、なぜ真夏に開催か 猛暑で懸念高まる」と題された記事は、「日本列島を襲った今月の猛暑が、真夏の東京五輪開催に対する懸念を高めている」との書き出しで始まる。なぜ懸念が高まっているのか、「この時期は通常、1年の中で気温と湿度がもっとも高く、出場選手や観客に健康被害をもたらす恐れがあるからだ」。誰でもがそう思っている。そして同時に、メディアはどうしてこんな重要な問題に触れないのか疑問に思っている。個人的には7月25日付のこのコーナーで「開催時期の再考を」と記した。そしてロイターが昨日この問題の諸悪の根元を指摘した。予想通りの原因がこの問題の裏に隠されていた。IOC(国際オリッピック委員会)が受け取っている莫大な放映権料を支払っているテレビ局が、7月か8月の開催に拘泥しているのである。同業のメディアがこの問題に触れようとしない理由がよくわかった。

「9月あるいは10月に五輪が開催される場合、米国では、ナショナルフットボールリーグ(NFL)のシーズン開幕や野球の大リーグ(MLB)プレイオフといった他のスポーツイベントと視聴者を取り合うことになる。欧州でもサッカーシーズンの序盤と重なる」(ロイター)。猛暑のオリンピック開催はテレビ局の都合なのである。スポーツイベントの少ないこの時期にオリンピックを開催すれば、テレビ局は莫大な放映権料を労せずして回収できる。7、8月開催は選手や観客の都合ではなく、テレビ局への経営的な配慮によって決まっていた。IOCも資金源であるテレビ局に配慮せざるをえないのだろう。さらに驚くのは開催時期について日本が立候補ファイルで、「晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」(同)とアピールしていることだ。なんということだ、この責任は誰がとるのだろう。