日銀の黒田総裁はきょうの午後3時30分から記者会見を行う。金融政策決定会合を受けて、今後の金融政策の進め方を説明する。決定会合自体は現状維持でまとまるだろう。注目すべきは今後への対応だ。内閣府は7日に発表した景気動向指数(一致指数)で、景気の基調判断をこれまでの「足踏み」から「下方への局面変化」に引き下げた。日本の景気は後退局面に入った可能性が高い。例えば輸出。1月の貿易統計によると輸出は前年比8.4%減と2カ月連続で減少している。中国向けは同7.7%減で中国経済低迷の影響を受けている。こうした中で日銀の金融政策についても、「出口論争」は完全に影を潜めてしまった。逆に片岡審議委員のように「いま、もっと大胆な政策転換が必要」という意見が勢いを増しつつある。
日米貿易摩擦に英国のEU離脱に伴う不透明感の長期化、イタリアの財政悪化、トランプ大統領による壁建設問題など世界経済には懸念材料が山積している。こうした中でFRBが1月の公開市場委員会(FOMC)で実質的な利上げの先送りに踏み切った。金融引き締めの象徴である資産買い入れ停止措置も年内に終了すると決めた。金融引き締めから金融緩和への転換を模索し始めたのである。ECBは7日に開かれた理事会で「期間2年の貸出条件付長期資金供給オペを9月から再開する」と決めた。ドラギ理事長の懸念はパウエルFRB議長よりもはるかに強いようだ。英国のEU離脱混迷に対する不安が強いのだろう。景気悪化を先取りした、ある意味では大胆な決断である。こうした中で昨日、今日と日銀の金融政策決定会合が開かれている。
日本の景気は大方の予想以上に深刻なのかもしれない。10月には消費税の引き上げも控えている。片岡審議委員は就任以来金融政策だけで景気は良くならないと強調している。金融政策にプラスするとすれば財政政策しかない。日本の景気が本当に減速の度を増しているとすれば、消費税の税率引き上げの停止だけでは済まなくなるかもしれない。財政赤字が一向に減らない現状の中で、新たな財政出動が必要になる。こうした経済の実態を反映しているのだろうか。米国ではMMT論争が起こっている。日本はどうするのか。その手始めとしてまず、黒田日銀総裁の発言が注目される。日本はデフレ含みの経済運営という点では、世界の最先端を走っている。日本の政策が世界に波及する可能性がある。きょう黒田総裁は何をいうのだろうか?
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