2019年4月1日 19時40分新元号 選定過程
二松学舎大学の塩沢一平教授によりますと「令和」の典拠となった万葉集の序文というのは、あとに続く32首が詠まれた背景などを説明した文章です。
今回の序文のあとには当時、太宰府の長官だった大伴旅人の邸宅で開かれた宴席で、集まった32人が詠んだ梅にまつわるうたがつづられています。
典拠された序文は「春の初めの良い月にさわやかな風が柔らかく吹いている。その中で、梅の花が美しい女性が鏡の前でおしろいをつけているかのように白く美しく咲き、宴席は高貴な人が身につける香り袋の香りのように薫っている」という意味だということです。
歌人 岡野弘彦さん「初春のさわやかさ伝えている」
昭和天皇や皇太后さまから和歌の相談にも乗った歌人の岡野弘彦さんによりますと、新元号『令和』の典拠となった万葉集の序文は太宰府に派遣されていた大伴旅人の家で正月に宴会が開かれ、32首のうたが詠まれた時の状況が説明されたものだということです。
序文の内容は「正月の気分を表したもので、『初春の月はすがすがしく、空気は快い。風はやわらかい。梅の花は、鏡の前のおしろいのように白い花を開いていて、らんの花は、後ろにかぐわしい香りを漂わせている』という、初春のさわやかさを伝えている」ということです。
岡野さんは「万葉集のうたは、やまとことばで書かれているが、元号がやまとことばだと、長くなるので、漢文風の文章で書かれた序文から引用したことに今回の特色があるのだと思います」と話しています。
国文学専門家「『蘭亭序』『文選』参考か」
国文学が専門で万葉集を研究している明治大学の山崎健司教授によりますと、新しい元号、「令和」に使われた万葉集の第5巻の序文は中国の六朝時代の政治家で、書家として名高い王羲之の書「蘭亭序(らんていじょ)」や同時代の詩文集の「文選(もんぜん)」を参考にしたのではないかということです。
これについて山崎教授は「当時は中国の書物の言葉を使うことが教養のバロメーターだった。典拠となった作品を取り込むことで、その世界観も取り込むことが表現技法の1つだった」と話しています。
また、山崎教授は典拠となった序文について、「『気淑く(きよく)風和ぎ(かぜやわらぎ)』といったみやびな言葉が多く使われていて全体的に柔らかいイメージだ。これまでの元号は中国の書物が典拠で時代の理想などについて書かれていたが、それとは一線を画する」と話しています。
序文では当時の九州の役人がうたげを催し、集まった32人が梅の花について詠んだ背景などが説明されていますが、「一つのテーマについて個人が多様な考え方を持ちこれからの時代に向き合っていこうというメッセージがくみ取れるのではないか」と話しています。
さらに、「序文は漢籍を参考に作られているが、外来のものを吸収し、独自の新しいものを生み出すというのも、日本的でおもしろいと思う」と話しています。
日本の古典専門家「今回の元号選定 大変意義深い」
日本の古典に詳しい、国学院大学の中村啓信名誉教授は「令の字は画数が少なくよい意味が込められているが、あまりなじみのない言葉なので国民に親しまれて浸透していくことを願う。元号は将来的には広く使われている国語から選ばれるべきだと思うので、今回の選定はその第一歩として大変意義深い」と話していました。
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