[東京 27日 ロイター] – 令和時代の初の国賓として来日しているトランプ米大統領は27日、安倍晋三首相と首脳会談を行った。両首脳は、北朝鮮問題を含む防衛分野での認識が一致していることを強調した。
他方、通商問題ではトランプ大統領が8月中に何らかの合意を発表すると言明。環太平洋連携協定(TPP)には縛られないとも強調し、日本側に強い圧力をかけたことをうかがわせた。安倍首相は交渉加速で一致したと述べるにとどまり、貿易不均衡の是正をめぐり、日米間に大きな「温度差」が存在していることを鮮明にした。
日米首脳会談は冒頭、首脳同士の会談が予定時間を超えて行われ、続いて少人数の会合、両国の主要閣僚なども参加したワーキングランチが行われた。
首脳同士の会談の冒頭、トランプ大統領は首脳会談の主要なテーマが、対北朝鮮問題、防衛分野、通商問題の3つであることを指摘。中でも通商問題では「われわれは貿易不均衡問題に取り組んでいる」、「貿易不均衡は、じきに解決するだろう」と述べた。さらに「われわれは通商に関し、おそらく8月に何らかの発表をする見通し」と踏み込んだ。通商問題では「自動車について議論する」とも語った。
会談終了後、両首脳は共同会見に臨み、そこでもトランプ大統領は日米貿易不均衡の是正に強い姿勢で対応するスタンスを強調した。
今後の日米通商問題では「公正と相互主義に基づく、日本との経済関係改善に努力する」と述べ、「あらゆる貿易障壁を取り除くことが目標」と言明。「信じられないくらい」に大きな不均衡が存在するとし、米国からの対日輸出が公正に取り扱われることを望むと強調した。
トランプ大統領は、会見では合意の時期について冒頭発言のようには8月とまでは言及しなかったが「貿易について、近く発表することを望む」と述べ、早期合意に強い意思を示した。
さらに農産物貿易で、日本がTPP並みの関税引き下げが最大限の譲歩であるとの立場を繰り返しているのに対し、トランプ大統領は「私はTPPに縛られない」と発言し、日本がTPPで決められた水準を超えて関税を引き下げることに強い期待感を表明した。
一方、安倍首相は会見で、昨年9月の共同声明に沿って、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表による協議を加速させることで一致したと述べたが、合意時期のメドなどへの質問に対する具体的な言及はなかった。
「米経済に最も貢献しているのは日本企業。日米の経済関係は大きく発展しつつある」と述べ、「日米双方にとって、ウィンウィンとなる合意としたい」と語り、日本企業の貢献に理解を求めた。
通商問題を巡っては、安倍首相が従来の見解を繰り返し、具体性のある発言を回避した印象。「攻め」の米国/「守り」の日本という構図もうかがえ、両国の主張に大きな溝があることを示した。
だが、日米同盟関係の基幹部分である「防衛分野」や、対北朝鮮問題などでは、両首脳は息の合ったところをみせた。
会見の冒頭、安倍首相は「親密な個人的信頼関係により、日米同盟のきずなは揺るぎようがない」とトランプ大統領との個人的な信頼関係に裏打ちされた日米関係の蜜月ぶりを誇った。
北朝鮮問題では、朝鮮半島の非核化に向けた取り組みでトランプ大統領と一致。拉致問題の解決に向け、大統領の全面的な支持を得たことも表明した。
一方、トランプ大統領は、日本が防衛力を強化することに対する支持を表明。日本が最新鋭戦闘機・F35を105機購入するとしていることも紹介し「米国の防衛装備品の最大の購入者である」と賞賛した。
北朝鮮問題では「金(正恩朝鮮労働党委員長)が非核化を進めることを引き続き望む」、「制裁は続いており、北朝鮮問題は急がない」、「北朝鮮との方向性には満足」、「短距離ミサイル発射は気にしていない」と語り、米朝交渉が再び、軌道に乗ることへの期待感を示した。
安倍首相も金委員長との会談について、日本人拉致問題解決に向け、前提条件を付けずに同委員長と向き合う考えをあらためて示し、「トランプ米大統領からは全面的な支持をいただいた」と語った。
安倍首相は米国と対立関係にあるイランを念頭に「中東地域の平和と安定は国際社会において極めて重要だ」と指摘し、「日本としてできることがあれば行っていきたい」との考えも示した。
(Jeff Mason記者、Linda Sieg記者、編集:田巻一彦)