G20サミットが開幕した。安倍首相はきのう、中国の習近平国家主席と首脳会談を行なった。この会談で習主席が来春、国賓として訪日することが決まった。また「永遠の隣国」として両国関係をさらに改善・強化することや北朝鮮問題、貿易問題、さらに環境問題や気候変動といった地球規模の課題、尖閣諸島をめぐる問題も議論にのぼった。会談時間は約1時間とある。通訳を交えた会談であることを考えると、密度の高い首脳会談だったようだ。それだけではない、NHKによると首相は「南シナ海について非軍事化の重要性を指摘」「香港での大規模なデモを踏まえ、1国2制度のもとでの自由で開かれた香港の繁栄が重要だと指摘」した。最後に新疆ウイグル自治区を含む中国国内の人権状況を踏まえ、「いかなる国も人権の尊重や法の支配など普遍的価値の保障が重要」との考えを伝えたというのだ。
これが事実なら驚愕の首脳会談ではないか。日本のトップ外交はこれまで、ややもすると控えめで、相手国の“傷口”にはできるだけ触れないようにしてきた。「沈黙の日本」、「主張しない日本」というイメージが国際的に定着している。そんな中で、NHKの報道が事実だとすれば、今回の日中首脳会談は過去に例をみない驚くべき会談ということになる。香港の「逃亡条例」を批判し、返す刀で新疆ウイグル自治区に絡んだ人権問題まで提起したというのだから、日本国首相としては前例のない突出ぶりだ。G20議長と言う立場、日中関係が改善に向かっているという事実、環境に恵まれたと言う面はある。だが、「言うべきことも言えなかった」これまでのトップ外交を振り返れば、今回の発言は突出している。これが事実なら日本外交史の1ページを飾るのではないか。多少大げさかなという気もするが、個人的には首相の発言を断固支持したい。
それにしても他メディアはどうして沈黙しているのか。本当にこの発言はあったのか、メディアの報道を一通り当たってみた。中国の人権問題を指摘したと書いたメデャアはNHKを除くと見当たらない。産経新聞と朝日新聞は「逃亡条例」までは記事にしている。だが、人権問題には一切触れていない。ロイターやブルームバーグなど外国通信社にもその記述はない。一体これはどういうことだろう。NHKの誤報なのだろうか。そう言えばトランプ政権は最近になって中国の人権問題を執拗に取り上げている。安倍首相はトランプ大統領に配慮したのだろうか。NHKには最近首相寄りという批判がつきまとっている。人権問題の指摘もその一環なのだろうか。真実はいずれはっきりするだろう。「いかなる国も人権の尊重や法の支配など普遍的価値の保障が重要」、今朝はたった一行のこの報道がやけに気になった。
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