米政界のホープと目されているアンドレア・オカシオ・コルテス下院議員が、米大統領選でバーニー・サンダース候補を支持すると表明した。サンダース候補は動脈閉塞の治療を受けるために選挙活動を一時停止、支持率もウォーレン、バイデンの両氏の後塵を配している。そのサンダース候補を若手のホープであるコルテス議員が支持するという。民主党内の支持率がこれによってどう変化するか注目したい。支持率とは別にもう一つ気になるのは富裕税の行方だ。サンダース、ウォーレン、コルテスの各氏をはじめ民主党左派の多くは、拡大一方の所得格差を解消する手段として富裕税の導入を掲げている。
米大統領選挙はトランプ氏の共和党対民主党の戦いであると同時に、世界中で深刻化する所得格差拡大をストップするか放置するかの戦いでもある。米国の資産保有構造は上位1%の大金持ちが全米資産の40%を保有していると言われている。これを解消するための有力な手段の一つが富裕税である。フランスの経済学者トマ・ピケティが数年前、「21世紀の資本」のなかで格差解消の有力な手段として富裕税を取り上げた。その時は賛否両論が入り乱れ導入の機運は盛り上がらなかった。しかし、ここにきて米大統領選挙で民主党の有力候補がこの税の導入を具体的に打ち出したことから、この税に関する関心が米国のみならず世界中で高まってきた。
富裕税は個人の資産に対して課す税金である。ウォーレン候補の提案は5000万ドル(約54億円)から10億ドル(同1080億円)の資産を保有する世帯に対して2%、10億ドルを超える世帯に足して3%の富裕税を課すというもの富裕税に関しては著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏や、JPモルガン・チェースのジェーミー・ダイモンCEOなどが党派を超えて支持を表明している。富裕税を導入すると資産家は自分の資産をタックス・ヘイブンに持ち出すといったマイナス面も指摘されている。何をやってもマイナス要素は残る。問題は格差をどうやって解消するかだ。格差解消に向けた手を打たない限り社会の二極化は際限なく続く。その先にあるのは社会位秩序の崩壊だろう。日本もそろそろ異次元緩和から格差解消社会のあり方に関心を向けるべきだ。
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