中国・武漢発の新型肺炎をめぐる報道が連日続いている。患者数や死亡者数、感染経路、希望者を日本に帰国されるための政府の支援活動など、これに関連した情報がメディアに溢れている。想定外の事態が起こったのだからある意味では当然かもしれないが、だからこそ冷静な対応も必要だ。気になるのは誰が、いつ、どこで、何を、どうやって決めたのか、プロセスにまつわる疑問がほとんど解明されていないことだ。武漢からの帰国者は病院で一旦検査を受けたあと、千葉県勝浦にある民間のホテルに滞在し、潜伏期間中はここで隔離状態のまま過ごすようだ。他者への感染を防ぐために必要な措置だが、このホテルはどうやって選定されたのだろうか。
重箱の隅を突いているわけではない。WHOが昨日「緊急事態」を宣言した。新型肺炎は、国境を超えて世界中に広まっている。治療方法もワクチンもない中で、とにかく感染の拡大を防ぐことが最優先の課題だろう。そのためには政府の関係機関だけではなく、民間も様々な形で協力する必要がある。メディアが正確な情報を伝えることも感染拡大を防ぐ上で欠かせない。武漢からの帰国者の中には病院での検査を拒否した人が2人いた。気の早い政治家の間からは、緊急事態法を制定するために憲法を改正すべきだとの主張も飛び出している。趣旨は理解できるし、そうした議論も必要だろう。
だが、想定外の事態に直面した時、我々はどう行動すべきか。感染症なら手洗いやマスクの携帯など、ごく当たり前のことを当たり前にやるしかない。そのうえで、想定外を想定する訓練をすることだ。そのためには誰が、いつ、どこで、何を、どうやって、どの権限に基づいて、決めたか。目の前で起こっている想定外への対応を誰にでもわかるように「見える化」することだ。そうすることによって、次の想定外が想定しやすくなる。連日の報道は「主張する報道」が多い。こうすべきだ、ああすべきだ、「べき論」が幅をきかせている。半面、千葉のホテルに決まった経緯など、「記録する報道」はほとんどない。これはほんの一例だが、来るべき想定外を想定するためにも、記録する報道が必要な気がする。かく言うこの原稿も「べき論」か。反省。
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