米連邦最高裁判所判事・ギンズバーグ氏の死去にともなう後任選びに大きな進展があった。トランプ大統領に批判的とされるロムニー上院議員が、後任を指名する採決に賛意を示したためだ。ロムニー氏は共和党員でありながら来るべき大統領選挙ではトランプ氏に投票しないと公言している。その人が後任判事の早期採決に賛意を示したのだ。これによって共和党は上院で過半数を維持することが可能になるとみられ、後任選びが一気に加速した。トランプ大統領も後任の指名について昨日、「われわれは決定を下す。恐らく26日になるだろうが、25日か26日だ」と語った。上院の公聴会を経て採決は大統領選挙の前後か、遅くとも年何に実施される見通し。トランプ政権下で最高裁判所の判事は保守系が6人、リベラル系が3人と保守色が一段と強まる可能性が出てきた。

大統領選挙と一緒に実施される上院議員選挙で共和党は過半数を失う可能性が指摘されている。仮にバイデン候補が勝利し、上院でも過半数を占めれば民主党は上下両院で過半数を占めることになる。そうなれば最高裁判事はリベラル系が指名されることになる。このため民主党は新しい大統領のもとで後任を決めるべきだと主張してきた。この主張を実現するためには上院共和党の過半するわれが必須の条件。だがロムニー氏の決断によって民主党の期待は一気に萎んでしまった。ロイターは「上院民主党ナンバー2のダービン議員は、民主党が採決を阻止するためにできることはほとんどないと述べた」と伝えている。後任に女性を起用すると表明しているトランプ大統領の意中の人は、シカゴの連邦高等裁判所で判事を務めるエイミー・コニー・バレット氏だとブルームバーグは伝えている。

バレット氏は人工中絶に否定的な判事だとみられているようだ。このため。「中絶反対の活動家らは、バレット氏を指名するようホワイトハウスやトランプ氏に積極的に働き掛けている」(ブルームバーグ)という。さらにバレット氏を指名すれば「トランプ氏は中西部のカトリック票を確保でき、民主党候補のバイデン前副大統領にリードされている『ラストベルト(中西部地域と大西洋岸中部地域の一部にわたる脱工業化が進んでいる地帯)』や五大湖周辺州での巻き返しに役立つ」(同)との指摘もあるようだ。すべてが大統領選挙に通じている。それを憚らないところが従来の政権と違うところだが、大統領選挙が終わるまで死ねないと頑張っていたキンズバーグ氏はさぞ無念なことだろう。エイミー氏48歳。最高裁判事は終身雇用。かくして米国の司法界は保守化していく。