バイデン大統領が目玉政策として掲げている1.9兆ドルのコロナ対策予算の議会審議がこれから本格化する。トランプ大統領時代からこの予算をめぐって民主、共和両党はさやあてを繰り返してきた。予算規模の縮小を求める共和党に対して民主党は譲歩の姿勢を示しつつも、依然として米国のGDPの1割近い巨額な規模を維持している。米財務長官に就任したジャネット・イエレン氏「今こそ大胆に行動すべきだ」と思い切った財政出動に積極的。その一方で、オバマ政権時代に財務長官を務めたローレンス・サマーズ氏は、「未知の領域だ」と経済の過熱化への警戒感を示している。失業者は依然として高水準にとどまっている。半面、エコノミストの間には「米経済は今年の後半にかけて急回復する」との見方が大勢になりつつある。積極財政を先取りするようにNYダウは騰勢を強めている。巨額財政の執行は是か否か。
個人的にはイエレン氏の意見に賛成で、米国のみならず世界経済の低迷を打開するためには各国が積極財政に転じる以外に生き残る道はないと考えている。だが、問題はある。この予算で低所得者が救済されるのか、必ずしも見通しがはっきりとしていないことだ。日本流にいえば特別定額給付金の再交付予算が盛り込まれているが、これは一時的な困窮者対策。所得格差の拡大を阻止するような政策は見当たらない。コロナ対策と称しているものの、中身は公共事業や環境対策、中小企業に対する支援事業など様々な対策が盛り込まれており、予算の策定に当たって民主、共和両党による予算の分捕り合戦が繰り広げられた。それはいまでも続いているのだろう。弱者対策と称して既得権益の維持、拡大、争奪戦が繰り広げられている。状況は日本も一緒だ。巨額予算が承認されれば、既得権益保有者の権益がますます拡大する。
必然的に所得格差は拡大する。世界一の金持ちであるテスラのイーロン・マスク氏。彼がビットコインに投資すればビットコインが急騰し、連れて株価が上層する。結果的に全米でたった1%の富裕者の資産が、全体の資産の3分の1を独り占めするといった異常な事態が繰り返される。追加予算の規模を拡大すれば拡大するほどこの比率は大きくなる。いずれ1%の富裕者が全資産の99%を独り占めするような事態が起こるのかもしれない。GDPの規模では20年代後半に中国が米国を抜いて世界最大の経済大国に躍り出ると予想されている。おそらくそうなるだろう。だが、中国が米国を抜いたとしてもこの構造は変わらないだろう。共産主義国家である中国は米国以上に所得格差が大きい国である。問題は資本主義とか共産主義、社会主義といった体制の違いではないだろう。コロナが突きつけているのは不平等の是正だ。問題はこの課題に対する解決策が巨額化する予算の中に見当たらないことだ。
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