[キーウ(キエフ)/ワシントン 29日 ロイター] – ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、ロシアとの和平交渉が頓挫するリスクが高いと述べた。南部の要衝マリウポリでロシア軍に包囲されているアゾフスターリ製鉄所からの民間人退避も進展はないもよう。

<マリウポリ退避の兆候なし>

ウクライナ大統領官邸は29日、アゾフスターリ製鉄所から民間人を退避させる計画だとしていた。製鉄所に立てこもりを続ける兵士の1人は、一緒にいる数百人の民間人の退避がついにかなうと希望を持っていたという。しかし、日が暮れても退避が行われる様子はなかった。

その後、同大統領はロシアとの和平交渉について悲観的な見方を示した。ロシア軍の残虐行為に対する国民の怒りがその背景にあるという。

インタファクス通信は、同大統領がポーランドの記者に対し「(ウクライナ)国民はロシア軍を殺したいと思っている。そうした態度を示している限り、話し合いは難しい」と述べたと報じた。

一方、ロシアのラブロフ外相は、ウクライナ政府が米国や英国の支持で立場を変えていると非難した。

<キーウで報道関係者の犠牲>

一方、ロシアがウクライナの首都キーウ(キエフ)に向け発射したミサイルが民間住宅を直撃し、がれきの下からラジオ自由ヨーロッパ/ラジオリバティ(RFE/RL)のプロデューサー、ビラ・ヒリッチ氏の遺体が発見された。同ラジオは米政府が運営する放送機関で、ロシア政府による支配の及ばないロシア語放送を行っている。 

ウクライナ外務省の報道官は「キーウ中心部にある住宅をロシアの弾道ミサイルが直撃したとき、彼女は就寝しようとしていた」と述べ、ロシアの攻撃を強く非難した。

米国防総省のカービー報道官も29日、ロシアによるウクライナ侵攻について「実に冷淡で、最も堕落した種類の残虐行為だ」と批判。プーチン大統領が民間人に対してこれほどの残虐行為を働くとは考えていなかったと述べた。

<士気低下か>

西側当局者は29日、ロシア軍の死傷者数について、軍事作戦の規模縮小後は減少しているものの、なおかなりの高水準にあり、兵士の士気低下につながっているとの見方を示した。

ロシアはキーウの攻略に失敗した後、東部ドンバス地域に戦力を集中している。