「ロシア軍は30日、黒海の戦略的前哨基地である蛇島(ズミイヌイ島)から引き揚げた。ウクライナ側が勝利した格好でロシアによるウクライナの港湾封鎖の手が緩む可能性がある」。これはロイターが今朝、4時29分に配信した記事だ。「蛇島」は両軍にとって黒海に浮かぶ戦略的拠点。一般的には「ズミイヌイ島」と呼ばれている。ロシア軍は侵略開始の直後にこの島を占拠、ウクライナの海上輸送を支配する拠点にしてきた。これまでこの島をめぐってウクライナ軍とロシア軍は何回も激闘を繰り返してきた。その重要拠点をウクライナ軍が奪い返した。この戦争の将来を左右する重要な出来事だと思いきや、ロシアは穀物の海上輸送を実現するための「善意のしるし」と発表。思わず「嘘だろう」と叫びたくなった。ロシアを信用しない先入観が、個人的には完全に出来上がっている。

無意味だと思うがロシアの発表を少し詳しく見てみよう。ロイターによるとロシアは、ズミイヌイ島の返還は「ウクライナからの穀物輸送を可能にする人道的回廊設置に向けた国連の取り組みをロシアが妨害していないことを示すために、『善意のしるし』として蛇島からの撤退を決定した」と発表している。ブチャの無差別殺戮はウクライナの仕業と嘯くロシアである。スーパーへのミサイル攻撃に関してプーチンは「ロシア軍が民間施設を攻撃することはない」と涼しい顔でシラを切る。こんな例は数え上げたらキリがない。ロシアは国をあげて黒を白といいくるめるプロバガンダ国家である。国営メディアが追随してこれを拡散する。おぞましい国だ。蛇島はウクライナ軍が奪還したのか。ロイターは、「ウクライナ軍は上空から蛇島を撮影したとみられる画像をフェイスブックに投稿」したとの事実をまず紹介している。

それによると、数本の黒煙が立ち上がる様子が映され、「(敵軍は)島を後にしたようだ。現在、蛇島は炎に包まれ、爆発が起こっている」と説明する。そして、ウクライナ軍幹部の証言を引用する。「ウクライナ軍はまだ蛇島を占領していないが、占領するつもりだ」と語っている。奪還したとは言っていないが、この島を爆撃したのはウクライナ群であることは間違いない。この記事から判断する限り、ロシア軍は黒海の要衝であるズミイヌイ島を放棄したように見える。恐れをなして逃げたのだろう。それを「善意のしるし」とプロパガンダする。これを情報戦争というのだろうか。ここまでくると下卑た品性のしからしむる嘘と言いたくなる。いずれにしても「ズミイヌイ島」の奪還、ウクライナ戦争の行方を大きく左右するような気がする。ロシアも内情は苦しいのだろう。