[東京 22日 ロイター] – 政府は22日に開催したGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、廃止原子炉の建て替えや運転期間の延長など原発活用の方針をまとめた。2011年の東京電力福島第1原発事故以来、原子力政策は「脱原発」の流れにあったが、既存原発を最大限活用する新たな方針へと転換する。

世界で脱炭素の流れが進む一方、ロシアのウクライナ侵略などによりエネルギー需給がひっ迫する中、エネルギー安定供給の観点から、原発の活用が不可欠と判断した。電源構成の原子力比率を2021年度の約7%から30年度に20―22%にするとの方針のもと、まずは停止プラントの再稼働を加速する。昨年閣議決定したエネルギー基本計画では「可能な限り原発依存度を低減する」としていた。

原発を持続的に活用するため、廃止を決定した炉の次世代革新炉への建て替えの具体化を進めるとした。運転期間については原則40年、最長60年とのルールを維持したが、安全性確保を前提に一定の停止期間を除外することで実質的に延長する。

岸田文雄首相は同会議であいさつし、政策を加速していくためには、国民や地域の信頼を積み上げていく地道な取り組みが不可欠だと指摘。「高レベル放射性廃棄物の最終処分につながるよう、文献調査の実施地域の拡大を目指し、最終処分関係閣僚会議を拡充する」と語った。

<GX実現に向けた法案を次期国会に提出へ>

原発の運転期間延長に対応するための安全規制を巡っては、稼働から30年以降発電しようとする原子炉は、10年以内ごとに認可を受ける必要があるとの制度案について、原子力規制委員会が21日、了承した。今後、原子炉等規制法の改正案をまとめ、来年の通常国会への提出を目指している。

今回まとめられた政府の基本方針では、原子力のほか、再生可能エネルギーの「最大限活用」を掲げ、こうした取り組みに、今後10年間で官民合わせて150兆円超の投資が必要と試算する。

うち20兆円規模を「GX経済移行債(仮称)」により先行して調達し、民間投資の呼び水とする。23年度当初予算案では、次世代革新炉の研究開発や脱炭素技術の実証規模の拡大などに向けた投資の財源として、GX移行債を1.6兆円発行する。

GX移行債の償還財源としては、二酸化炭素(CO2)の排出に金銭負担を求めるカーボンプライシング(CP)を活用する。炭素賦課金は、化石燃料の輸入事業者などを対象に28年度ごろから導入。排出量取引制度では、26年度から制度化することで本格的な取引を目指し、33年度ごろから電力会社に対して政府が割り当てる排出権を有償化する。

いずれも企業にとって過度な負担とならないよう、まずは低い負担で導入し徐々に引き上げる。排出量取引が本格化する26年度までに実務を担う機関として「GX経済移行推進機構(仮称)」の設立も検討する。

岸田首相は7月、グリーン社会の実現に向け産業構造の転換を図る政策を具体化させるためGX実行会議を立ち上げ、エネルギー安定供給と脱炭素の両立に向けた具体的な方策を検討するよう指示していた。今回まとめた基本方針の具体化に向け、「GX実現のための法案を次期通常国会に提出すべく、幅広く意見を聞くプロセスを進めていく」と語った。

(浦中美穂 杉山健太郎 編集:石田仁志)