ゼロコロナ政策を廃止、大胆なウィズコロナ政策に転換した中国が、日本と韓国に対してビザ(査証)の発給停止という想定外の対抗手段に打って出た。日本政府は早速撤回を求めて中国政府に抗議したほか、外遊中の岸田総理も「新型コロナウイルス対策とは一見、関係がないと思われる査証発給の制限を一方的に行ったことは極めて遺憾だ」(毎日新聞Web版)との声明を発表した。また中国にある日本大使館は「中国外務省は、各国の入国制限に対して対等の措置をとると表明しているが、日本は中国人の訪日ビザの発給を制限しておらず、中国側のやり方は完全に対等性に欠けている」とTwitterに投稿した。今朝のメディアもほぼ同じ理屈で、「中国のやり方は対等でない」と非難している。個人的にも中国のやり方は国際的な常識に反しており、異常だと思う。だが、「対等でない」の解釈が根本的に違う気がする。

感染が急増する中で中国がウィズコロナ政策に転換したことを受け、多くの国で中国からの入国を制限する水際規制が強化されている。日本と韓国も世界の国々に足並みをそろえて水際対策を強化した。それが習近平主席には気に入らないのだろう。陰性証明の提出などどこの国でも実施している。にもかかわらず、日本と韓国にはビサの発給停止という強行措置で対抗してきた。これに対して政府とメディアは「対等でない」と怒りの声をあげている。中国情勢に詳しい神田外語大学の興梠一郎教授はN H Kに対して、「日本が水際対策を強化したことへの報復措置で、圧力だと思う」と述べている。その上で「中国は各国の水際対策を撤廃させたいと思っている。中国はゼロコロナ政策をやめ、国民に対して、自由に行動し海外にも行っていいとしているのに、各国から制限をかけられるとつじつまがあわなくなる」と指摘する。それはそうだが、どうして日本と韓国はビザの発給停止なのか?

問題の本質は「対等」であるかどうかではない。中国は習近平を頂点する7人の常務委員の合議によって運営されている。7人といっても権力を一手に握った習近平と6人の常務委員という構成だ。この6人は最高権力者に追従するポチにすぎない。彼らの中で日本と韓国はもともと対等に接する国ではないのだ。台湾のように自分の領土とまでは言わないが、米国と対等に渡り合う強国・中国にかしずくべき属国と見ている。彼らの狙いは属国である2カ国を見せしめに使って、国内外に自国の正当性をアピールすることだ。興梠教授が指摘する「各国の水際対策を撤廃させる」ための道具にすぎない。これがビザ発給停止問題の本質だ。中国の独裁政権はもともと日本と韓国を見下している。14億の中国人民ではない。1億弱の共産党員の頂点に立つ常務委員会の認識だ。ここを理解しないとビザ停止問題のピントが合わなくなる。日本中に巣喰う親中国派、親習近平派はこの先どうするのだろうか・・・。