[東京/ロンドン 6日 ロイター] – 日産自動車と仏自動車大手ルノーは6日、資本関係を見直し、出資比率を15%ずつに揃えることで合意した。ルノーが支配的だった日仏連合は約四半世紀を経て対等になる。ルノーが設立する電気自動車(EV)の新会社には、日産が最大15%出資することなども決めた。

両社は6日までにそれぞれ取締役会を開き、資本を含む提携関係の見直し計画を承認した。ルノーによる日産への出資比率を約43%から15%に引き下げ、日産のルノーへの出資は15%のまま維持する。3月末までに最終契約を締結する予定。

両社は対等な関係になることを示すため、それぞれ本社のある日本やフランスではなく英国で会見を開いた。ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は「日産との新たな取り決めにより、ルノーは相乗効果を失うことなく俊敏性を得られる」と説明。日産の内田誠社長は「対等なパートナーシップが変革を可能にする。新しい体制が相互信頼を深める」と述べた。

ルノーのジャンドミニク・スナール会長、両社と連合を組む三菱自動車の加藤隆雄社長も会見に出席した。同会長は、ルノー株を15%保有する筆頭株主のフランス政府が今回の合意を「完全に支持している」と語った。

15%ずつの株式保有に関しては、両社とも付随する議決権を自由に行使できる。一方、ルノーの日産株28.4%分はフランスの信託会社に預け、信託分は大半の議案でルノーの議決権が無効になる。

ルノーが日産株を売却する際には日産の承認が必要となり、日産を筆頭の売却候補とする。売却までの間、ルノーは経済的権利である配当金と売却代金収入が維持される。デメオCEOは、売却は「日産にネガティブにならないよう、秩序立った方法を考えている」とし、あらかじめ決めた特定期間内に売却する義務もなく、「数カ月で売ることはなく、ある程度の時間がかかる」と語った。

日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)はロイターに対し「これまでの提携は、シナジー効果や世界的な販売台数に関するものだった。これからの15年は、お互いに、また株主のために、いかにしてナンバーワンの価値を生み出す存在になるかが焦点だ」と述べた。

EV新会社は、日産と三菱自の欧州戦略の一翼を担う。内田社長は「日産が欧州でビジネスチャンス、価値を生み出すことを可能にする存在」と指摘。加藤社長も、三菱自は東南アジアなどに資源を集中させ、欧州と北米は連合の資産を活用すると説明、新会社からの「OEM(相手先ブランドによる生産)は非常に魅力的な解決策の1つと確信しており、出資を検討する」と述べた。

デメオCEOは、EV新会社の株式はルノーが過半を維持すると強調。ルノーが内燃機関事業の新会社で協業する吉利汽車をEV新会社の関連事業に参画させることは考えていないとした。

EV事業の金額面の詳細は明らかにされていない。デメオ氏は「市場が決めることだ」と述べた。一部の関係者は100億ユーロに達する可能性があると指摘している。

日産とルノーはラテンアメリカ、インド、欧州でEVの協業などを推進。欧州では、三菱自も両社とEVでの協業を検討するほか、3社で物流、電池、充電インフラ、アフターセールスなどにおける連携の機会を模索、販売店の収益向上やコスト削減を図る。

CLSA証券アナリストのクリストファー・リクター氏は、日産とルノーが対等な資本関係になることで両社間のわだかまりが減り、もう少し調和的に協力できる可能性はあるとしながらも、これまで通りの共同開発、原材料や部品の共同調達による費用分担などの連携効果がある程度で「それ以上の成果はないだろう」との見方を示した。

日産とルノーの関係は1999年、経営危機に陥った日産をルノーが救済するため約6000億円を出資することから始まった。元会長のカルロス・ゴーン被告が再建のため送り込まれ、工場閉鎖などリストラを断行。その後、協業は進んだが、今は事業規模で日産がルノーを上回り、持ち分法利益や配当金の形で日産がルノーの業績を支えている。

フランスの法律上、40%以上の出資を受ける子会社の日産は親会社ルノーの株式を持っていても議決権がない。このため、日産社内では資本関係の不平等さに不満の声が高まっていた。