[東京 22日 ロイター] – 岸田文雄首相は22日、東京電力福島第1原発の処理水を24日から海洋放出すると表明した。海外の一部にみられる海産物の輸入規制の動きに対して早期撤廃を求めていくとともに、国内消費の拡大や新たな輸出先の開拓に対策を講じると述べた。
政府は同日午前に関係閣僚会議を開き、現時点で準備できる万全の安全確保、風評対策、生業継続支援策を講じることを確認。東電に対して原子力規制委員会の認可を受けた計画に基づき、速やかに海洋放出に向けた準備を進めるよう求めた。
岸田首相は具体的な放出時期について「気象・海象条件に支障がなければ8月24日を見込む」と語った。同閣議後に会見した西村明宏環境相は「現状は台風などが近づいている状況ではないため、(24日に)速やかに実施できる」との見通しを示した。
岸田首相は、処理水の海洋放出に関する日本やIAEA(国際原子力機関)の科学的根拠に基づいた取り組みに対し、「幅広い地域の国々から理解・支持の表明が行われ、国際社会の正確な理解が確実に広がりつつある」と指摘。国内の漁業関係者の風評被害に対しても責任をもって対応していくと強調した。
西村環境相は海洋放出に反対を表明している中国など一部の国や地域については、科学的根拠に基づいて反論すると強調した。
中国とロシアは処理水の海洋放出を巡り、日本に質問書を共同提出。日本に周辺国の懸念に対処する誠実さがあるのなら放出計画を直ちに停止し、安全な放出方法について討議すべきだとした。これに対して日本政府は18日付の文書で反論、従来の立場を主張している。
国内の漁業関係者との調整に関しては、岸田首相が21日夕、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相とともに、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長らと面会。処理水の処分について国が全責任をもって対応していくことを約束するなど、政府側の取り組みを改めて説明し理解を求めた。
処理水放出には国内の漁業関係者が反対し、坂本会長は、この日の面会でもその姿勢に「いささかも変わりはない」とした。一方、IAEAの報告書などを通じて科学的な安全性への理解も深まってきたと語り、政府が風評被害対策や安全性の担保に長く関与し続けることを強く求めた。
西村経産相は面会後に開いた会見で、漁業関係者から一定の理解を得たとの認識を示した。
東電は今後2日程度かけて、放射性物質のトリチウムが残る処理水を大量の海水で薄め、濃度を規制基準の40分の1以下に下げたうえで、最終的な安全性を確認する。東電に加えて日本原子力研究開発機構(JAEA)も確認を行い、処理水を海洋放出する。
放出後は、環境省が海水の調査結果を、早ければ4日程度で開示する。農林水産省でも処理水放出から数キロ離れた地点で捕れる魚を調査し、結果を公表する。政府は、今後漁業者とのフォローアップ体制も構築するとした。
(杉山健太郎、竹本能文、浦中美穂)
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