米商務省が26日発表した2023年第3・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値は、年率換算で前期比4.9%増と改めて米経済の堅調ぶりを見せつけた。ロイターによるとこれは、21年第4・四半期以来約2年ぶりの高い伸びだという。市場では米経済の先行きを懸念する声が多い。にもかかわらず、「底堅い労働市場を背景に堅調な個人消費が主導」(ロイター)し、市場予想の4.3%増も上回る堅調ぶりだった。改めて理由を考える必要もないだろう。経済成長を加速する主因は個人消費だ。それを支えるのが潤沢な個人金融資産。可処分所得の増大が物価上昇にめげない個人消費を支えている。問題はこれがどこまで続くかだ。いまがピークと読む市場はFRBが次回会合で「利上げを行わない」と予測。それを先取りするかのようにECBはきのうの理事会で、2022年7月から10回連続で実施してきた政策金利の引き上げを見送った。FRBは来週FOMC(公開市場委員会)を開催する。
第3・四半期のGDPについてロイターは「底堅い労働市場を背景に堅調な個人消費が主導した」と分析する。格付け会社・フィッチの米経済部門責任者オル・ソノラ氏は「FRBの積極的な引き締めサイクルや金融情勢の逼迫を寄せ付けず、経済成長は回復から再加速に移行した」とみる。景気後退懸念どころではない、「再加速している」というだ。最大の要因は「経済活動の3分の2超を占める個人消費が4.0%増と、前四半期の0.8%増から大きく加速。モノとサービス双方への支出が見られた」ことだ。堅調な個人消費が生産増を誘発。消費が不振で供給過多に陥っている日本とは真逆だ。コロナ禍で米政府は個人を対象に莫大な資金供給を行ってきた。株価も地価も上昇した。個人金融資産の増大が需要に繋がっている。日本も同様の政策を実施してきた。にもかかわらず個人消費は増えなかった。金融資産は富裕層に偏り、一般庶民は実質所得がマイナス。ここに需要が盛り上がらない要因がある。
とはいえ、米経済にも懸念が付きまとっている。ロイターは以下の点を指摘する。(1)10月に再開された学生ローン返済は、エコノミストの試算によると、(年間)約700億ドルで、個人の可処分所得の約0.3%に相当する(2)クレジットカードの滞納が増えている(3)税金が重しとなり預貯金を切り崩す動きが出ている(4)第3・四半期の貯蓄率は3.8%で、前期の5.2%から低下した(5)全米自動車労働組合(UAW)のストライキが長引いているーなど。いずれにしても米景気は今がピークか、これからも続くのか、当面の最大の注目点になる。対する日本、取りすぎた税金の還付は“当たり前”として、次なる課題は政策金利や預金金利の引き上げであり、物価を上回る賃金の上乗せだ。中小企業が被っているコスト増の価格転嫁を後押しすることも大事だ。経済の好循環に向けてやることは山ほどある。
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