岸田首相の国会答弁などを聞いていつも思うのは、「中身がまったくない」ということだ。代表的なのは次のような発言だ。「パーティー券疑惑で失った国民の信頼を得るために、私自らが先頭にたち、火の玉となって、国民の信頼回復に努める」。その舌の根が乾かないうちに、総理自身にまつわる疑惑が浮上した。といいうよりだいぶ前から指摘されていたのだが、神戸学院大学の上脇教授がこの件で広島地検に告発状を提出したのだ。検察はこの告発状を受理しており、国民の信頼回復を目指す岸田首相はパーティー券疑惑の“被疑者”になった。参議院に移った国会論戦の中で総理は「対象となった自民党の疑惑議員の処分については総合的に勘案して決める」と宣言している。処分時期はいつか?自民党大会が開かれる3月17日までには決めたいとの意向を示した。被疑者である自民党総裁の岸田総理は果たして、疑惑の自民党員を処分できるのだろうか。
岸田総理の疑惑を暴いたのは週刊ポストだ。ネット上に全文が公開されている。詳しい中身は省略するが、かいつまんでいえば「(2022年6月12日に)地元広島で開催された『首相就任を祝う会』は、実質的に岸田事務所の主催で行われた政治資金パーティーであり、この時の収入1100万円強(推測)と支出の詳細が政治資金収支報告書に記載されていない」というものだ。なぜ不記載なのか?そこに手の込んだカラクリが隠されており、この手口そのものがマネーロンダリングとの憶測を呼んでいる。これは憶測で済む話ではない。カラクリそのものが裏金づくりになっている。世にいう「岸田方式」だ。どうして岸田氏は総理就任後にも宏池会の会長に留まったのか。おそらくこうしたカラクリの旨みを知っていたからではないか。それを隠したうえで「国民の信頼回復に向けて“火の玉”なって取り組むと」再々にわたって強調してきた。“火の玉”になるはずだった総理は、国民の批判をあびてすでに“火だるま”になっている。
これでだけではない。先の政倫審(衆議院)で立憲民主党の野田議員が2022年4月に総理は3回政治資金パーティーを開催していると暴露。これを追求された総理は「あれは前からやっている勉強会であり、政治資金パーティーではない」と言い張った。勉強会の収入は3000万円に達していると野田氏は追及する。この年の4月といえばロシアがウクライナに侵攻(2月24日)した直後である。国際政治がにわかに緊迫の度を強めている中で総理はのうのうと勉強会を開催していた。一国の総理として俄かには信じられない行動だ。総理就任を祝う会といい勉強会といい、岸田氏は総理・総裁の立場を利用してひたすらカネ儲けに専念していた。野田氏の「総理在任中に勉強会は開催しないと約束してください」との要請に、なかなか応じようとしなかった理由が、週刊ポストの記事を読んでようやくわかった気がする。岸田総理を守銭奴とまでは言わないが、おそらく裏金づくりにしか興味がないのだろう。
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