Scott Carpenter、Immanual John Milton

  • サービサーが資金を留保、投資家が見込むリターンに大きく影響
  • 「これは投資家が予想していなかったリスクだ」-専門家

今年1月、TPGアンジェロ・ゴードンやリブレマックス・キャピタル、ロードアベットなど複数の投資会社に衝撃が走った。

  これら企業はゴールドマン・サックス・グループが2021年にまとめた債券ディールに参加。ディールの中身はサンフランシスコのアパート数十棟を購入するための資金調達だった。しかし借り手企業は22年末までにデフォルト(債務不履行)に陥り、同債券の裏付けとなるローンは最終的に大幅な損失で売却された。

  やがて債券保有者側の仲介役であるミッドランド・ローン・サービシズは、さらに悪いニュースを伝えた。この取引を巡る問題点の解決を図る間、少なくともしばらくは投資家が当て込んでいた1億6400万ドル(約241億円)は回収されないということだった。商業用不動産担保証券(CMBS)ではサービサー(債権回収業者)が資金を留保することはあるが、今回は投資適格級が付与された複数の資産クラスにも損失が及び得るほどの異例な規模だった。

  この措置は1兆ドル規模のCMBS市場における新たなリスクファクターになる可能性があるとして、ウォール街の注目を集めている。既に歴史的な低迷にある不動産市場でサービサーが想定外の決定を下し、結果的にリターンが大きく損なわれることを投資家の一部は懸念している。

  アカデミー・セキュリティーズのストラテジスト、スタブ・ガオン氏はミッドランドによる資金留保額がこの種の米証券市場では過去最大規模とみられ、他の取引が債務不履行に陥れば投資家には障壁が増える確率が高まると述べた。

  「これは投資家が予想していなかったリスクだ」とガオン氏。多額の留保にはそれなりの理由があるのかもしれないとしつつ、「また同じようなことが起こらないとは限らない」と続けた。

  ミッドランドの広報担当者はこの件に関してコメントを避けた。TPGアンジェロ・ゴードン、リブレマックス、ゴールドマンの広報担当者もコメントを控え、ロードアベットからはコメントの要請への返信がない。

原題:A Missing $164 Million Highlights New Risk for Mortgage Bonds(抜粋)