簗発言が国会の焦点になり始めている。この発言が事実だとすれば、とんでもない話だ。だからこそ、事実関係を明らかにすべきである。そのポイントは、簗氏が削減を指示したかどうかだけではない。国交省は予算の箇所付けに際し、茨城県と当該市への交付金を削減している。その理由を問いただせばいいのである。

国交省の説明に合理性があれば、少なくとも予算削減そのものに不正があったとは言えなくなる。それでも簗氏の倫理的な問題は残る。そこを問わず、野党や主要メディアがどれほど主観的、情緒的に簗氏や高市首相の任命責任を追及しても、不透明感に覆われた財政運営が改善されることはない。国会やメディアが政府の監視役として十分に機能することにもつながらない。

簗発言を契機に、日本の財政運営にまつわる不透明感が改めてクローズアップされた。簗発言については今後の推移を見守るとして、財政運営の不透明感について考えてみたい。

真っ先に思い浮かぶのは「財源」論争だ。高市首相が推進しようとしている飲食料品にかかる消費税の減税案では、年間約5兆円の税収が失われるとされている。これをどう穴埋めするのか。それが財源論争の焦点である。

高市首相は先の所信表明演説で、財源について次のように述べている。

「そもそも消費税減税は、野党の皆様のこれまでの御主張の中にも多くみられたと承知しております。財源確保に関しては、市場の信認を得られるよう、特例公債に頼らずに確保することとしており、御心配には及びません」

「御心配には及びません」の一言が野党の不興を買っている。とはいえ、財源に関する首相の説明はこれだけではない。この発言に先立ち、次のようにも述べている。

「補正予算依存から脱却し、恒常的な施策は当初予算に計上します。前例の壁を越え、新しい提案を入口で閉ざさないよう、『シーリング』を設けず、複数年度の計画に基づくものを基本とし、国内投資や潜在成長率を大きく引き上げる措置を対象とする『「強く豊かな日本」投資枠』を創設します」

さらに「経済安全保障上、特に重要な分野などについては、特別会計で『別枠管理』を行うこととし、複数年度で十分な財源を確保します」とも述べている。

要するに、財源問題を予算編成改革も含めて総合的に考えていると強調しているのだ。

これに対し、野党は具体的な財源を想定して質問している。ここでも議論はかみ合っていない。その一つが「租税特別措置・補助金・基金の見直し」だろう。これによっていくら財源を捻出できるのか、明らかにせよという要求である。

これは「日本版DOGE」に関連する検討項目である。本日、ロイターは「マクロスコープ:日本版DOGE、『ガツガツ』と高市首相が指示 対象基金7兆円規模」と題する記事を配信している。租税特別措置、基金、補助金の見直しの進捗状況を取材した内容だ。

それによると、財源に回せる金額が明らかになるまでには、まだ時間がかかるという。要するに、現時点では分からないのだ。野党の質問は、まだ確定していない数字を示せと要求しているに等しい。

そのほか、来年度の税収の自然増がどの程度になるのかも、現時点では分からない。物価上昇が続く中、積極財政を基本とする来年度予算が成立した後、日本の景気がどこまで回復するのか。これも不確実だ。分かっているのは、ここ数年、税収が数兆円規模で上振れする年度があったということである。

もちろん政府は来年度予算の編成に際し、経済成長率の見通しを公表する。だが、それもあくまで予測である。仮に高めの成長率が実現すれば、約5兆円の飲食料品の消費税減税による税収減の相当部分を補える可能性も否定できない。

要するに、政府も野党も不確実な将来の数字をめぐって議論しているのだ。政府には、そうした不透明な状況の中でも来年度の経済や税収を見通し、予算を編成する役割がある。市場の信認を維持するという点からも、財源確保の見通しを示す意味は大きい。

だが、「特例公債に頼らない」という説明だけでは、市場も野党も納得しない。ここは悩ましいところだ。

いろいろ書いたが、要するに言いたいのは、日本には巨額の金融資産があるということだ。どうしてこれを財源としてもっと活用しないのだろうか。ここもまた、日本の財政運営で腑に落ちない点である。

例えば、日本政府が保有する米国債などから生じる利息収入である。米国債だけの利息収入の詳細は公表されていないが、外国為替資金特別会計の2025年度の利子収入は約4.21兆円とされる。これを一般会計に繰り入れれば、減税の財源にもなる。

もちろん、すでに一部は一般会計に繰り入れられている。毎年、一定額の繰り入れが実施されているのだが、財源を議論するのであれば、保有金融資産から得られる収益をどの程度活用できるのか、与野党は真剣に議論すべきだろう。

外為特会に限らない。政府が保有する資産はさまざまなところに存在する。金融資産大国・日本で、どうして資産活用の検討が進まないのか。

巨額の金融資産や含み益を抱える一方、国民生活はインフレの脅威にあえいでいる。与野党による不毛な財源論争を目にするたびに感じる、日本の不可思議の一つである。