大屋敷英樹

 自治体の道路予算を「カットした」と発言した簗和生農相(47)が14日、事実上の更迭に追い込まれた。自身への支援の有無で予算に差をつけたかのような発言に不信感が高まり、衆院選中に支持者をバスで無料送迎した問題も浮上した。地元の自治体からは「疑念は晴れていない」と説明を求める声が上がった。(岡本立、宇都宮支局 大屋敷英樹)

わずか3分

 「農林水産行政に集中できない状況は避けなければいけない」。午後6時45分頃、首相官邸で高市首相との会談を終え、集まった50人を超える報道陣の前に姿を現した簗氏は、ぼう然とした表情で声を絞り出した。

 辞表提出の決定打となった事情などの質問が飛んだが、「総理に辞意をお伝えした」と繰り返し、詳細な説明はせずに、わずか3分で取材を打ち切った。「議員辞職をしないのか」との問いに答えないまま、車で立ち去った。

 今月5日に始まった臨時国会は、簗氏の言動を巡って紛糾した。「働いて仕事で返せ」と後押ししていた高市首相も13日の衆院予算委員会で、簗氏の「予算カット」発言を「本当に不適切でダサい」と批判した。

 この日も朝から国会に臨んだ簗氏は、審議の合間に報道陣から相次いだ質問には厳しい表情のまま無言を貫く一方、「農林水産政策をしっかり進めることに、全力で職責を全うしたい」と答弁し、意欲を見せていたが、夕方には高市首相に辞表を提出した。

急きょサポート 

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡って計1746万円の不記載があったとして党から役職停止6か月の処分を受けながら、9月17日の内閣改造で初入閣を果たした簗氏。「予算カット」発言が明らかになったのは、それから約2週間後だった。

 農林水産省は、簗氏の国会や報道への対応をサポートする職員を急きょ増強した。今月13日の閣議後記者会見で「大臣の『お支えチーム』が、本来業務そっちのけで対応することに疑問が出ている」と質問が出ると、簗氏は「様々な対応に当たってもらい、心苦しく思っている。非常に負担をかけて申し訳ない」と述べた。

 就任から1か月足らずで辞めることとなり、同省幹部の一人は「農政とは関係のないところで問題視された。我々だけで支えるのは難しい」と淡々と語った。

「恥ずかしい」 

 辞任を表明した簗氏に対し、地元からは説明を求める声が相次いだ。

 簗氏が「予算をカットした」と名指しした栃木県那須烏山市の川俣純子市長は14日夜にコメントを発表。「熟慮の上でのご決断であり、誠に残念」としながら、「辞任したからといって、市民に大きな不安を与えたことは事実で、断じて許されるものではない」と厳しく指摘。2月中旬に簗氏が国土交通省に那珂川町を含む2市町の道路予算について問い合わせをした点などを挙げ、「疑念は何一つ 払拭ふっしょく されておらず、このまま幕引きされることはあってはならない」とし、説明責任を果たすよう求めた。

 那須烏山市では14日の市議会臨時会で、簗氏に抗議し、地元への説明を求める決議案を賛成多数で可決。臨時会後、相馬正典議長は「市民に不安と疑念を与えている。簗氏は市民に説明し、市民の声にも 真摯しんし に耳を傾けてほしい」と述べた。

 選挙区内の有権者からも様々な声が聞かれた。

 那須塩原市でコメなどを育てる男性(57)は「簗氏は農業に精通しており、コメの価格が安定するような政策を期待していただけに残念だ」と惜しんだ。矢板市の団体職員女性(51)は「ニュースで連日、栃木が悪い話題で取り上げられて恥ずかしい。一度言ったことを取り消すのは常識的に考えて難しいので、不適切な発言をしたのなら辞任も致し方ない」と話した。