9日に明らかになったトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領の電話会談を契機に、国際情勢が急展開を見せている。中間選挙を前に物価高への対応に苦慮するトランプ氏。「ロシア産ディーゼル(軽油)の輸入解禁」を選挙対策として打ち出した時には、正直言って「トランプ氏はウクライナを見捨てた」との印象を強くした。

だが、ここにきて、この電話会談の裏で米中ロ3カ国による「首脳会談構想」が進んでいることが明らかになった。「ディーゼル解禁」は、単なるウクライナ戦争の終結にとどまらない、大きな外交構想の一環なのかもしれない。ただ、首脳会談が実現するとしても、その先の展開は現時点ではまったく見通せない。

トランプ氏は昨日も「ゼレンスキー氏は交代すべきだ」とメディアに語っている。ウクライナに対する強硬姿勢は変わらないようだ。米中ロ首脳会談構想は一体誰が仕掛けたのか。今後の展開を見守る上でも、これまでの経緯を簡単に整理しておく必要がある。ただ、情報は錯綜しており、以下に紹介する報道の確実性が保証されているわけではない。

3大国による首脳会談の直接的な提案者は、どうやら戦争犯罪人であるプーチン氏のようだ。9日のトランプ氏との電話会談の際、「ウクライナ戦争の終結条件を議論するため、3者会談を提案した」とされる。ディーゼル解禁でトランプ氏と合意したとされる、あの電話会談だ。これに対してトランプ氏も「前向きな姿勢を示している」と報じられている。

この情報を最初に報じたのは、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とみられる。同紙は18日付で「プーチン大統領、ウクライナ情勢を協議するためトランプ氏と習氏との首脳会談を提案」と題する記事を掲載した。ロイター通信も同紙の報道を引用する形で伝えている。

その後、米紙ワシントン・ポストや米ニュースサイトのアクシオス(Axios)、ロイター通信などが続報を伝えている。各種報道を総合すると、会談場所は中国・深圳(しんせん)で、11月18~19日のAPEC首脳会議に合わせて開催する構想とされる。ウクライナのゼレンスキー大統領は会談に招かれないとの情報もある。

会談のテーマは何か。ここが重要だ。プーチン氏の狙いは、ロシアに有利な形でウクライナ戦争の停戦条件を協議することにあるとみられる。米ロ2国間の停戦協議よりも、中国を加えた3大国による協議の方が国際的な重みを持つと考えているのだろう。

これに対してトランプ氏は「前向きだ」と報じられている。ただ、同大統領は協議のテーマに「核軍縮を含めたい」との意向も示しているという。一方、中国については「首脳会談の開催によってAPECの存在感が薄れることを懸念している」との報道も一部にあるが、現時点では態度を明確にしていない。

いずれにしても、会談が実現したとしても、3首脳の思惑が一致するとは思えない。仮に停戦条件をめぐって米ロの思惑が一致すれば、ウクライナの意向が置き去りにされ、同国の犠牲の上に停戦が成立することにもなりかねない。

そもそも会談が実現するかどうかさえ、現時点ではまったくわからない。そんな中で、トランプ氏によるウクライナへの口撃だけが異常な形で先行している。

中間選挙を前に、トランプ氏の支持率はロイター/イプソスの世論調査で31%に落ち込んだ。不透明感が増す国際政治に、新たな不確定要素が投げ込まれた格好だ。

世界の3大国は、この会談が実現するとして、一体何を狙うのか。世界は本当の和平に向けて動き出すのか。期待できる要素はほとんど見当たらないが、今後の推移を見守るしかない。