参院で少数与党となっている連立政権(自民党と日本維新の会)にとって、衆院の比例代表定数削減法案をめぐり、国民民主党と「政治的合意」に達した意義は大きい。議員定数の削減という難しい課題を前に、3党の立場は必ずしも一致していなかった。ある意味では「違いを乗り越えた合意の成立」であり、「呉越同舟型の合意」と言ってもいいだろう。

3党の実務者が削減法案の修正で合意したことにより、難航が予想された同法案が成立に向けて動き出した。今回の動きは、与野党の全面対立に終始しがちだった国会論議に一石を投じるだろう。

これが消費税減税法案に波及するかどうか、現時点ではまったく分からない。それでも、参院での国会運営に新たな道筋が見え始めたことは間違いない。

今回の合意形成に貢献した政治家は誰か。筆頭に挙げられるのは鈴木馨祐氏だろう。自民党政治制度改革本部の本部長代理であり、衆議院選挙制度改革をめぐる政党間協議の座長を務めている。

鈴木氏は、当初案に盛り込まれていた45議席削減案を見直し、31議席削減案を政党間協議の場で提案した。

維新が主導した45議席削減案は、衆院議員定数の約1割を削減するというものだった。鈴木氏は、人口減少などを勘案して削減幅を31議席に圧縮する案を提示した。これに対し、国民民主党は19議席削減を提案した。この時点で、3党は削減の方向性では一致したものの、削減規模をめぐっては隔たりが残っていた。

鈴木氏は削減議席数の圧縮に加え、次のような制度改革案も提示した。

① 比例代表の議席配分方式を、現行の「ドント式」から中小政党に比較的有利な「修正サンラグ式」に変更する。

② 比例代表での復活当選に必要な小選挙区での最低得票率を、有効投票総数の「10分の1」から「6分の1」に引き上げる。

③ 比例代表の中国、四国両ブロックを統合する。

④ 複数の政党が比例代表の候補者名簿を一本化できる「統一名簿方式」を導入する。

これらの提案は、国民民主党が主張していた制度改革の方向性とも重なるものであり、同党を合意に導く役割を果たしたと考えられる。

鈴木氏の提案は、単なる議員定数の削減から、選挙制度改革を含む包括的な政治改革へと議論の幅を広げたものだ。これによって、国民民主党が合意を受け入れやすい環境が生まれたことになる。

一方、維新にとって、吉村洋文代表が「政治改革のセンターピン」と位置付ける議員定数削減の規模を縮小することは、容易に受け入れられる提案ではなかっただろう。

それでも維新が譲歩を決断したことは、合意形成を大きく前進させた。共同代表の藤田文武氏をはじめとする維新幹部の判断も、今回の合意成立に重要な役割を果たしたと言える。

もう1人挙げるとすれば、国民民主党の古川元久代表代行だろう。同党は独自案として19議席削減を提案していたが、最終的には31議席削減案を受け入れた。

古川氏は記者会見で「苦渋の選択だが、総合的に勘案した」と述べ、賛成に回る方針を示した。自党の主張に固執するのではなく、制度改革全体を評価して合意を選択したということだろう。

今回の合意が今後の政局にどのような影響を与えるのか、現時点では何とも言えない。プラスに働くのか、マイナスに作用するのかは、今後の国会情勢次第だ。

とはいえ、高市首相が実現を目指す飲食料品に係る消費税の減税法案が、次の重要課題として控えている。

今回の3党合意が、議員定数削減という個別の課題にとどまるのか。それとも、政策ごとに与野党が協力する新たな国会運営の先例となるのか。

今後の政局、とりわけ与党が過半数を持たない参院での国会論戦が注目される。