• EUと自由貿易圏を創設、TPPへのアクセスも視野-交渉方針
  • 保守党内の最強硬派や企業経営者の一部から反対意見も

メイ英首相は欧州連合(EU)離脱を巡る路線対立で分裂する閣僚らに対し、自身が考えるソフトブレグジット(穏健な離脱)方針をひとまず受け入れさせた。EUとの緊密な通商関係を維持する内容で、同首相は自身の姿勢に否定的な閣僚に方針への支持を要求し、できない場合は辞任するよう迫った。

交渉方針には、EUとの間で自由貿易圏を創設し、モノと食品についてEUと共通のルールを適用することが盛り込まれた。環太平洋連携協定(TPP)へのアクセスを目指す可能性も示された。合意取り付けはメイ首相にとって勝利だ。同首相は権威がなく、弱くて決断力に欠けるリーダーだと長く目されてきた。

英首相別邸「チェッカーズ」での閣議で話すメイ首相 6日、写真家:Joel Rouse / Crown Copyright

企業にとっても歓迎すべき進展だ。産業界はここ数週間ロビー活動を強化しており、複数の名の知れた企業が、EU離脱時にひどい混乱が生じれば悲惨な結果になると警告していた。経済団体は交渉方針を歓迎した。

英との離脱交渉を担当するEUのバルニエ首席交渉官も今回の動きを評価。ただ、バルニエ氏はなお詳細を把握する必要があり、その多くの項目に難色を示す可能性がある。

メイ首相の方針では、サービスについてはEUと異なるルールを適用できることになる。これは金融サービスが従来と同じアクセスを得られなくなることを意味し、閣僚らはそれを認識している。EU諸国からの移民の問題についても一定の柔軟性を示す可能性を残したが、人の自由な移動が単一市場のメンバーであるための譲れない面だとするEUの要求水準には遠く及ばない。

メイ首相はなお不満をくすぶらせる閣僚らに交渉方針への支持を訴えさせようと、メディアに数人を登場させた。ゴーブ環境相はBBCのインタビューで、方針に全面的に賛成してはいないと認めた上で、「私は現実主義者だ」と述べた。また、ジョンソン外相は政府の立場がさらに軟化するのを阻止する上で最良の場だと考えたとして閣内にとどまることを決めたという。関係者が明らかにした。

一方、保守党内の離脱最強硬派の間ではメイ首相の交渉方針について、EUのルールに従うが英国がEUに影響を与えることはできない「ブラックホール・ブレグジット」を強要する内容だと批判する文書が配布された。交渉方針への反対意見は、より強硬な離脱を求める勢力からだけではない。英飲料メーカー、イノセントの創業者リチャード・リード氏は8日、企業幹部ら100人の署名入り書簡を基に、英国がEUとの関税同盟にとどまるよう訴えた。

原題:May Tames Divided Tories as Business Cheers Soft Brexit Plan (2)(抜粋)U.K. Cabinet Backs May’s Plan for Soft Brexit: Highlights(抜粋)May Binds Cabinet Into Her U.K. Brexit Plan as Criticisms Mount(抜粋)