[ブリュッセル 27日 ロイター] – 欧州議会選はこれまでの開票の結果、ナショナリズム勢力の伸びが限られた一方、大連立を組む二大会派の中道勢力も過半数を割った。EU統合強化を訴える各党は27日、要職や政策を巡る駆け引きを始めた。 

EU懐疑派の議席獲得が限られ安心感が広がり、ユーロ相場は早い時間帯に上昇したが、親EU会派の勢力状況が意識され伸び悩んだ。 

欧州議会が1305GMT(日本時間午後10時5分)時点で公表した暫定集計結果によると、各党・会派の獲得議席数は、議会第1会派の中道右派・欧州人民党(EPP)が180議席、大連立を組む中道左派の欧州社会・進歩連盟(S&D)が145議席、リベラル会派は109議席、緑の党は69議席となった。751議席中、これらの勢力は計503議席を得た。 

極右2会派は112議席。ナイジェル・ファラージ氏率いる英ブレグジット党は29議席を獲得した。 

緑の党やマクロン仏大統領の与党、共和国前進(REM)、スペインのサンチェス首相率いる社会労働党が一定勢力を確保したことを受け、新議会の勢力均衡が左に傾いた可能性がある。 

サンチェス氏はマクロン氏と協議するためパリに向かう際、「社会主義的、保護的な欧州を構築していく」と述べた。保護主義寄りの通商交渉姿勢、多国籍企業への課税や産業の環境規制強化をさらに推し進める可能性がある。 

EUなどの要職人事を巡る攻防が、議会を分断する可能性も指摘されている。 

ユンケル欧州委員長の後任には、EPPのマンフレート・ウェーバー代表が指名を目指すほか、中道左派のティメルマンス欧州委第1副委員長(規制・組織関係・基本権)、ベステアー欧州委員(競争政策担当)、英離脱問題のバルニエEU首席交渉官の名前も取り沙汰される。 

選挙結果を受けEUは28日に臨時首脳会議を開き、ユンケル氏のほか欧州中央銀行(ECB)総裁など要職後継人事を話し合う。 

今回の選挙について、ブリュッセルに本部を置くシンクタンク、ブリューゲルの責任者、グントラム・ウルフ氏は「重要なのは、極端な政策を掲げる勢力はそれほど議席を伸ばさなかったということだ」と指摘した。 

ルクセンブルクのベッテル首相はツイッターに「欧州の勝利だ。投票率は非常に高く、親EU政党が最も強い」と投稿した。 

欧州議会選の投票率は51%と、前回2014年の43%を大きく上回った。1979年の最初のEU規模の直接選挙以来、投票率が初めて上向いた。