インタビューに答える、1989年の中国民主化運動リーダーだった王丹氏=28日、東京都内

 1989年6月に中国の学生・市民の民主化要求を、軍が武力弾圧した天安門事件から30年の節目を迎え、当時の学生リーダー、王丹氏(50)が来日し、東京都内で時事通信の単独インタビューに応じた。王氏は「30年前、私が学生の時、天安門広場にいたのは中国政府に希望を持ったからだ。あれから30年がたち、われわれはもはや共産党が民主化を掲げるという希望や誤った幻想を抱いてはならない」と訴えた。日本の政府・民間に対しては「中国の民主化にもっと関心を持ち、支持してほしい」と求めた。

【図解】1989年に起きた天安門事件の状況

 当時北京大の大学生だった王氏は事件後、当局の指名手配リストの筆頭に挙げられた。2度投獄されたが、国際社会による圧力の結果、98年に仮釈放され米国に亡命した。現在は米国で中国の民主化を目指すシンクタンク所長を務める。
 王氏は30年前を振り返り、「一貫して中国政府が(市民に)発砲しないと認識していた」と述べ、軍の発砲には「とても驚がくした」と証言。犠牲者数については中国政府発表の319人より多く、「少なくとも2000人」との見方を示した。また「弾圧がなければ、中国はとっくに民主化していただろう」とも語った。

 中国共産党に「希望はない」と述べつつも「二つの望み」があると説明。「一つは、習近平(国家主席)の強権的手法は、共産党内部の権力闘争や分裂をもたらすこと。もう一つは、中国の深刻な社会矛盾と経済減速が進むと、政府と民衆は衝突する。それを鎮圧する共産党への民衆の抵抗は高まる」と述べ、中国の変革に期待を示した。

 一方、「日本の政府・民間は中国の民主化への関心が高くない」と失望感を表し、尖閣諸島や南シナ海などの問題で「中国と対立する日本が共産党に手を貸すメリットがあるのか」と疑問を口にした。その上で「中国が民主化すれば、日中は良好な関係を築ける。日本が中国の民主化を支持すれば日本や東アジアにプラスになる」と強調した。