[東京/ミラノ 31日 ロイター] – トランプ米大統領がメキシコに制裁関税を課す計画を発表したことを受け、自動車業界に波紋が広がっている。自動車メーカーの多くがメキシコを米国への生産拠点としていることから、影響は不可避との懸念が台頭している。 

トランプ大統領は30日、メキシコ国境からの不法移民流入に同国が十分に対応していないとし、6月10日以降メキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課し、移民の流入が止まるまで関税率を段階的に引き上げると表明。中米諸国からメキシコを通って米国に入る移民の流れを止める対策をメキシコが講じなければ、関税率は7月1日に10%、8月1日に15%、9月1日に20%、10月1日に25%に引き上げるとした。

トランプ大統領はツイッターへの投稿で「関税が上昇し、それを払いたくない企業はメキシコを離れ、米国に戻るべきだ」と述べた。 

TSロンバードのシニアマクロストラテジスト、ジョン・ハリソン氏は「米経済に打撃を与えず関税を武器にできるというトランプ大統領の見方を示しており、懸念すべきことで、世界の貿易見通し全体に誤ったシグナルを送ることになる」と述べた。 

全米自動車政策評議会(AAPC)は、対メキシコ制裁関税は、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を頓挫させ、米自動車業界が多額のコスト負担を余儀なくされる可能性があると指摘した。 

消費者への影響も必至とみられ、マッコーリー・セキュリティーズのアナリスト、ジャネット・ルイス氏は「米市場におけるマージンは極めて低い。自動車メーカーによる関税コストの消費者への転嫁は回避できないだろう」との見方を示した。 

米商務省のデータによると、昨年メキシコの組立工場で生産され、米国に輸入された車両は金額ベースで526億ドル、自動車部品は325億ドルに上る。 

トヨタ自動車のピックアップトラック「タコマ」や独フォルクスワーゲン(VW)の「ジェッタ」、ゼネラル・モーターズ(GM)のピックアップトラック「シボレー・シルバラード」といった、米国で販売されている人気車の一部がメキシコで生産されている。 

こうした懸念から、自動車・部品株は世界的に下落。トヨタは3%、日産自動車は5%、ホンダは4%、マツダは7%それぞれ下落。VWをはじめとする欧州勢は最大5%安、GMとフォード・モーターも約4%安で推移した。 

(田実直美記者、Georgina Prodhan記者)