[ヒューストン 31日 ロイター] – トランプ米大統領がメキシコからの輸入品に関税をかける方針を示したことで、両国間のエネルギー貿易が阻害され、結果としてメキシコ産原油を利用する米国の精製業者が打撃を受ける恐れがある。また、米国のエネルギー製品の最大の買い手であるメキシコによる報復も懸念されている。 

トランプ大統領は30日、メキシコ国境からの不法移民流入に同国が十分に対応していないとし、6月10日以降メキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課し、移民の流入が止まるまで関税率を段階的に引き上げると表明した。

メキシコの米国への原油輸出は1日当たり60万─70万バレル。大部分が米国の精製業者向けで、ガソリンやディーゼル燃料などの石油製品に精製されている。一方、メキシコが輸入する米国産原油と燃料は日量約100万バレル。米国最大の輸出先となっているため、アナリストはメキシコが報復措置に出た場合、こうした取引が阻害される恐れがあるとの懸念を示している。 

メキシコ産原油の供給が急減し、米業者が輸送費のかさむ遠方からの供給に切り替えざるを得なくなれば、精製燃料の価格が上昇する。PVMオイル・アソシエーツのアナリストは、米業者による日々のメキシコ産原油の調達コストが関税措置により200万ドル押し上げられる可能性があると指摘。米精製業者の業界団体、アメリカン・フュエル・アンド・ペトロケミカル・マニュファクチャラーズの責任者、チェット・トンプソン氏は、これにより米国内の燃料価格が上昇し、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」が頓挫する恐れもあるとの見方を示した。 

ただ原油取引業者によると、メキシコ産原油を利用しているメキシコ湾岸の精製施設はいわゆる「外国貿易ゾーン」内に位置しているため、精製品が輸出される限り関税措置の影響は受けない。 

チューダー・ピッカリング・アンド・ホルトのアナリストによると、メキシコ産の「マヤ原油」と国際的指標である北海ブレント先物との価格の差は30日時点で6ドル。トランプ大統領が表明した5%の関税が課されれば、この差は半分の水準に縮小し、マヤ原油の割安感は低下するとしている。 

トレーダーによると、マヤ原油と同グレードとされるウエスタン・カナディアン・セレクトは31日に米原油先物より16ドル低い水準で取引されており、価格差は前日の16.60ドルから縮小した。 

米精製業者は米国の制裁措置で減少したベネズエラ産原油の減少を一部補うためにメキシコ産原油を利用する。モーニングスターのアナリスト、サンディー・フィールデン氏は「メキシコ湾岸の精製業者はすでに米政府のベネズエラとイランに対する制裁措置のほか、石油輸出国機構(OPEC)の減産などで痛手を受けている」と指摘。「新たな代替先は限られている」とし、トランプ政権による対メキシコ関税措置で米国の精製業者の傷は深まるとの見方を示した。 

メキシコ産原油の主な輸入業者はバレロ・エナジー、フィリップス66、エクソンモービル、シェブロンなど。 

(Collin Eaton記者)