[ロンドン/ドバイ 4日 ロイター] – 英海兵隊は4日、欧州連合(EU)の制裁に違反してシリアに原油を輸送していた疑いのあるイランの大型石油タンカーを英領ジブラルタル沖で拿捕した。欧州はシリアへの石油輸出を2011年から禁止しているが、米国のように広範な対イラン制裁は発動させていない。欧州諸国による石油タンカーの拿捕も今回が初めでて、イランと西側諸国の対立が激化する恐れがある。 

拿捕されたタンカーは30万トン級の「グレース1」。中東から地中海方面に向けアフリカ大陸南端沖を航行した後、スペイン南端の英領海内で拿捕された。海洋情報筋によると、タンカーはスエズ運河を通る場合、積荷をいったん降ろす必要が生じ、押収される恐れもあるため、同運河を避けアフリカ回りの航路を選択した可能性があるという。 

これを受け、イラン外務省はイラン駐在の英大使を呼び、拿捕は「違法で容認できない」として厳重に抗議。拿捕されたタンカーはパナマ船籍で、運航会社としてシンガポールに拠点を置く企業が登録されているが、イラン外務省が英大使に抗議したことから、イランのタンカーであることが明確になった。 

ロイターが入手した輸送に関する情報によると、グレース1はイランの沖合いで積荷されたイラン産原油を輸送していた可能性がある。ただ同タンカーの文書には積載された原油はイラク産と記載されている。 

企業に対し制裁措置に関する助言を行なっている法律会社ピルスベリー・ウィンスロップ・ショー・ピットマンのパートナー、マシュー・オレスマン氏「EUが世界の目の前でこうした強い行動に出ることはこれまではなかった」とし、「北大西洋条約機構(NATO)加盟国の軍隊が関与していることを踏まえると、米国と何らかの方法で調整が行われていたと考えている」と指摘。「シリアとイランのほか、米国に対し、欧州は制裁措置の履行に真剣な態度で臨んでおり、イランの核プログラムを巡る問題に対応する能力もあるとのメッセージを送る意味合いがあった公算が大きい」と述べた。 

ジブラルタル自治政府の当局者は、拿捕されたタンカーが所属する国のほか、積載されている原油がどの国のものかについては言及していない。ただジブラルタル自治政府は、グレース1がシリアのバニヤス製油所向けに原油を輸送していたと見なす根拠はあると指摘。ジブラルタル自治政府のピカルド首相は「バニヤス製油所はEU制裁措置の対象となっている組織が所有している」とし、「ジブラルタル当局は英海兵隊の支援を受けタンカーを拿捕した」と述べた。 

英首相報道官は、メイ首相はタンカー拿捕を支持していると表明。ただ英外務省からコメントは得られていない。 

ジブラルタルの帰属を英国と争っているスペインは、拿捕は米国が英国に要請したもので、スペイン領海内で行われた可能性があるとの見方を示した。 

グレース1について、ロイターは今年に入り、米制裁措置に違反してイラン産原油をシンガポールと中国に輸送しているタンカーの1隻だと報道していた。グレース1の運航会社としてシンガポールに本拠を置く「IShips Management」が登録されているが、ロイターはこの会社と連絡は取れていない。 

文書には、グレース1は昨年12月にイラクのバスラにある港湾施設で原油を積荷したと記載されているが、バスラではグレース1が入港したとの記録はなかった。また、グレース1の位置情報を知らせるトラッキングシステムのスイッチは切られていた。その後、グレース1は完全に積載した状態でイランのバンダル・アサルーイェ港付近でトラッキングマップ上に現れた。 

ロンドンに本拠を置くエネルギーデータ企業、Kplerのシニアアナリスト、ホマヨウン・ファラクシャヒ氏はロイターに対し、グレース1は4月中旬にイラン産原油をイランのハールク島にある港湾施設で積荷したと明らかにしている。